世の中の興味深いマーケティング事例や大きな数字、意外な事実など、経営者 榊原直也 のアンテナに留まったビジネス話題をご紹介する『ばらさんのBusiness Talk | バラトーク』。
7兆円規模のダイエット産業に影響するともいうアメリカのある調査。その調査結果への着目から始まったディスカッションは、身近なダイエットや糖マーケティングへと展開、宇宙の歴史や数式など科学的な切り口による話題にも広がります。
◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人
◇ ゲスト 村西重厚さん
提供 : データ・サイエンティスト株式会社
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低糖質生活のダイエット効果を痛感した実体験
世の中は糖マーケティングに支配されている!?
1テーマに集中する1日は、充実感に満ちている
「宇宙の不思議」は頭の中の雑念を消してくれる
宇宙の歴史を論理の飛躍なしに説明できる現代科学
数式は自然科学の基礎となる世界共通の言語
低糖質生活のダイエット効果を痛感した実体験
榊原:糖質制限については未だにいろんな議論がありますね。実は先日ある調査が発表されました。肥満大国でありダイエット大国でもあるアメリカが調査したものです。
それによると、低脂肪の食事と低炭水化物の食事ではダイエットの効果に大差なし、という結論が出たそうです。609名の方々の調査結果として、スタンフォード大学の先生によって発表されました。このデータは、7兆円規模のダイエット産業に影響を与えるかもしれません。
大前:炭水化物は糖質になります。私は、個人的に低糖質の食生活をやってみた経験があります。たまたま一週間ほどほぼ家に引きこもりで仕事を連続する機会があって。
お米や麺類の多い外食では低糖質を実践するのは難しい。家に引きこもっていると、ひたすら野菜だけを食べるという生活も可能です。食べるのは、ほぼキャベツとトマトときゅうり。若干食物繊維は入ってるんですけど、1日の糖質の量が数gぐらいの食生活を続けてみたんです。
すると、1日目は頭が痛くてぼーっとしてすごく調子が悪い。2日目もそんな感じです。3、4日目ぐらいから、ちょっとすっきりしてくるんですよ。
榊原:何が起きてるんですか?
大前:私は医学の専門家ではないんですが。それまで大量の糖を摂ってきたので、体の中ではそれを処理する分だけのインスリンが出ているわけです。それなのに、急に糖の量が減ったから、インスリン過多の状態になってるのかな、と。それで極端な低血糖状態になっている。
でも、その状態が当たり前になってくると、体も低血糖でインスリン過多だと気付きます。インスリンが減り、体の中で適正な糖の量が戻ってくるので、ちょうど良いバランスになってくるんですね。
そうすると、お腹もあまり空かなくなってくるんです。初めはお腹空くとか気分悪いとか続いて、ちょっと辛いです。その後は生活していてもそんなに苦しくないっていう状態が続いて、ダイエットに。3週間ぐらいの間に体重も4、5kg落ちたんですよ。
世の中は糖マーケティングに支配されている!?
大前:体に入る糖を一時的に遮断すると、インスリンがかなり悪影響するということを感じました。逆に言うと、普段はある意味糖中毒の状態になっているのかなと思ったんです。糖には麻薬なみの強い依存性がある、という研究結果を出しているところもあります。
ひょっとすると、世の中は糖マーケティングに支配されているのかな。各食品会社が消費者に砂糖を食べさせるため、砂糖中毒に陥らせるためのマーケティングをしているのかな、ということを、都市伝説的に思った経験があります。
曽志崎:健康診断に行くと、ペットボトル飲料に含まれる砂糖の量がよく掲示されています。それを見ると市販飲料を手に取ることに抵抗感を覚えるけれども、いざ通常の生活に戻ってしまうとすぐに忘れてしまう。
また、あれを飲みたい、食べたいという欲求のままに、気づくとコンビニを利用している。そういう生活からなかなか離れられないというのは、ある種の中毒性によるものかと、今の話を聞いていて僕も思いました。
榊原:缶ジュースなどの裏の成分表示を見ると、「糖質3.2g」というふうに書いてあります。例えば3.2gだとすると、表面のラベルのところに「角砂糖3個の栄養」と掲載すれば、みんな飲むのを控えるんじゃないでしょうか。
大前:タバコみたいにね。タバコは最近「吸うと健康を害します」みたいな…。
榊原:広告表示がありますよね。
大前:糖も同じような表示をすればいいのに。
榊原:そう。何か目に見えるやつでね。
1テーマに集中する1日は、充実感に満ちている
榊原:僕は、高校3年間ずっと寮生活してたんですね。岡山県の山の上の方にある学校で、平日は「下界」と呼んでいた街に降りることも許されなかった。
寮生活では自由な時間がほとんどないので、時間の使い方に関して異様にマニアみたいになって。分単位で自分のスケジュールを決めてみたり。ところが、自分のやり方がよくなかったのか、学校に決められている時間が多すぎたのか、なぜか全部うまくいかなかった。
その時のトラウマなのか、僕はスケジューリングに対して未だに抵抗感があります。それで今、集中したい時には、逆にその日一日はもう1個のことしかやらないって決めるんです。
その一日は、電話にも出ないし、メールも見ない。決めたことだけの世界に浸りきることがあるんですね。時間の使い方としては、上手ではないんですけど。翌日に異様な満足感があるんです。それに浸った、という思い出が残るんですね。
テーマは、人に説明しても理解されないような小さな分野であったり、小さな研究テーマであったり。ごくありふれた日常のテーマのこともあります。
大前:テーマは仕事に関係しないこともあるんですか?
榊原:例えば「この宇宙はどうやってできたんだろう」という、誰しも持つ疑問ですね。よし、丸1日そのことだけを考え続けよう、と思った日がありました。当然、ご飯も楽しく食べますし、普通のことはしています。けれど、それ以外の時間は全部「宇宙がどうやってできたか」「どうやって今の僕らみたいになったのか」というテーマだけを追い続ける1日にしてみたんです。
後で細かいことは忘れちゃうんですが、少なくともその日1日は、宇宙の成り立ちや今の自分にたどり着く過程に迫っていくわけです。翌日起きたら、すごく満足感がありました。
「宇宙の不思議」は頭の中の雑念を消してくれる
榊原:僕らの体の中にある骨には、カルシウム分や鉄分が含まれています。カルシウム分や鉄分は、太陽よりももっと強烈に燃えている熱い星の中でしか生成されない物質なのだそうです。
ということは、僕らの体の一部はかつて恒星の中に存在していたわけですよ。光り輝く太陽よりももっと力強い星の中で、僕たちの体の一部分が生まれた。その星の寿命が尽きてバーンと爆発したことによって、宇宙に星のカケラが飛び散った。カケラが再構成されて、その成分が今の僕らの体の一部となっているんですね。
今の僕らの体は、宇宙の歴史とともに成り立っている。そう思うと、なんか不思議な気持ちになるんですよ。
大前:その話でいうと、ビッグバンが起こった瞬間って水素しかなかったらしいですね。
榊原:ああ、そうですよね。
大前:ビッグバンでは、原子と中性子のぶつかりでヘリウムが生まれ、数秒の間に摂氏何億度という温度が一気に冷えた。そのプロセスが太陽では今も起こっている、ということに思いを馳せると、相当いろんなことがどうでもよくなる感覚があります。
榊原:自分の頭の中で、面白い現象が起きるんですよ。
宇宙の歴史を論理の飛躍なしに説明できる現代科学
榊原:宇宙の歴史を解明してきた科学者の人達は本当にすごいと思います。現代から宇宙の点の状態まで延々とプロセスを遡っていって、今では点の瞬間の寸前のところまで迫れている。
今解明できている物理の法則で、ほとんど全部きれいに説明がつくんです。重要なポイントは、その説明には飛躍がないということ。ここはよくわかっていないからちょっとごまかして飛ばそう、とかがないんです。ごまかしやマジック、空想もありません。
例えば、水は摂氏4度の時に一番ぎゅっと密度が濃くなって質量が上がります。そういう今現在発見されている原理だけをたくさん使って、ちゃんと遡っていけるんですね。鉄はこういう環境から生成されるから、宇宙ではどういう星で生まれ得るのかが想定できる。じゃあ、ニッケルはどういう環境で生まれるのか?タンパク質はどうなのか?アミノ酸の元の成分ができるのには、何が必要なのか?
そういう理論や証明を1つ1つ科学者たちが2、300年かけて解明してきた。すごい年月と何万人もの天才たちが一生懸命に「真実を知りたい」という熱意で、人生をかけてやってきたんでしょうね。
宇宙の歴史の説明には、それが見事に詰まっているんです。小学校中学校高校生のときに習った理科の知識だけで、相当遡っていけます。ビッグバンの直前直後あたりでは、大学でしか習わないような理論が必要です。でも、その寸前ぐらいまでは、高校3年までで習う、普通の理科の教科書に出てくる物理法則でほとんど説明がつきます。
1つ1つの理論を知る必要はないんですが、この説明には飛躍がないということ。これを皆さんにぜひ知っていただきたいんです。
数式は自然科学の基礎となる世界共通の言語
大前:科学的な証明には、必ず数学がつきまとうじゃないですか。
榊原:常につきまといますよね。
大前:その世界がまたすごく深くて面白いなと思うんです。先日ある連載をいただいて、数学的な説明を文章でする、ということに挑戦しました。
榊原:また難しい仕事に挑戦されましたね。
大前:これが、もう本当に難しくて。
榊原:どういうテーマを説明するんです?
大前:ビッグデータの分析がテーマです。ビッグデータも統計学もほとんど知らないという本当に初心者の人達に、例えば仮説検定をどういうふうにするか、という説明を、数式を一切使わずに行うことに挑戦したんです。
数式というものが、いかに言葉として端的にその現象を表すことができるのか。それを日本語にひも解いて翻訳するという作業がいかに大変か、ということを思い知りました。
数式というものは世界共通の言語です。「y=ax」という数式を見ると、どこの国の人であってもある一定のグラフの形を頭に思い浮かべることができます。数学の世界や、数式で語り合う人たち独特の共通言語の世界観。そして、数式をもとに積み重ねていく物理学の現象の世界は、非常に興味深いなと思います。
榊原:それは人間が謙虚になる方法のひとつだと思います。人の話には思い込みやポジションが影響してしまいます。自分はこういうことを信じているからこう思いたい。ある宗派の方は、宗派の教義に基づいて歴史や世の中を見たくなる。常にそのポジション感覚が入ってきます。
世界中のそれぞれポジションの異なる人同士が、どうやって分かり合うのか。最後は、人それぞれの思い込みを一度排除して、実態がどうなっているのかを言葉じゃない方法でシンプルに表さざるを得ない。その道具のひとつが数式です。
あるものが3つあるという状況で、それが「3」だということは、かろうじて全員が同意できる事実です。3は不吉だという種族や、3はラッキー数だという種族も中にはいます。それぞれが捉える意味とは別に、でも、3という事実だけは残ります。その同意できる事実だけでどこまで世界を辿っていけるのか。それが自然科学の歴史だと思います。
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