私たちは不安を感じやすい生き物です。ただ、人が考える不安の9割は現実にならないとも言われています。 そんな不安を払拭するものとは。相対性理論の数式『E=mc2』を導き出したアインシュタインは、研究に「没頭」することで偉大な成果を残した一人。限られた時間で、仕事への情熱と成果を最大化させることは、ビジネスマンにとって永遠のテーマです。自分の生活リズムにあった時間管理法を見つけ、生活の骨格を構築することで、不安を打ち消す答えは見えてくるのでしょうか。今回も、村西重厚さんをゲストに、ディスカッションしました。
◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人
◇ ゲスト 村西重厚さん
提供 : データ・サイエンティスト株式会社
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- 答えのない社会の中で生まれた、『E=mc2』という普遍的真理
- ひとつのことに没頭する時間を作る大切さ
- 自営業が組み直すべき「生活の骨格」
- 生活の変化に不安や罪悪感をおぼえる必要はない
- 現代人に必要な「自分の身体をハックする」という概念
- パフォーマンスを最大限に高める『9時5時理論』
答えのない社会の中で生まれた、『E=mc2』という普遍的真理
村西:とある退屈な会議の時に、2次方程式の解の公式を自分で導き出そうとしてみたんです。「y=ax2+bx+c」を、「x=」にひも解くにはどうすればいいかと延々と取り組む。何が楽しいのかというと、ひとつしかない答えにまっすぐ挑むところです。数式に向かうことは、すなわち一切のノイズを排除してある極限にひたすら向き合うことなんです。
曽志崎:日常では様々な変数によって脳がぐるぐると動いているので、ひとつのことに集中して浸るという時間が、とても愛おしいということですね。
榊原:アインシュタインが発見した、『E=mc2』という相対性理論の式がありますよね。この式をあえて言葉で説明するとどうなるでしょうか。
「E」はエネルギーです。つまり「E=」は「エネルギーとは」という意味なのです。「m」は質量なので、いわゆる重さのイメージです。そして「c」は光の速度。それを「2回かける」と言っているんです。例えば、重い牛乳瓶があるとして、それに光の速さを2回かけてごらん、と言っているんですよ。言葉で説明されると意味不明じゃないですか。
でも、アインシュタインが発見したのは、「物体の重さに光の速度を2回かけると、その物体が持っているエネルギー量とたまたま一致するんだよ。なんでかは知らんけど」ということなんです。なぜ光の速度を2回かけるのかはよくわからないものの、とにかく自然界がそうできてしまっているんです。
村西:社会人になると、答えがないことに対して「正しいのかな」と思いながらもふわっと対応してしまうんですけれども、数式はやはり答えがひとつなんですよね。エネルギーは、電気やガスのように、手づかみ感のない「現象」です。でも、それがリアルな物体と式で結び付けられるということを知ると、少しゾクッとしますね。
ひとつのことに没頭する時間を作る大切さ
榊原:エネルギーと物の重さには何か関係があるだろうということは、当時も多くの人たちが感じていたと思うんです。
重い鉄の塊と紙ペラ一枚を比べて、どちらがエネルギーが強そうかと言われたらどうでしょうか。エネルギーが何なのかよくわかっていなくても、「そりゃ鉄の方がエネルギー溜まってそうやし、紙ペラ一枚ってなんか弱そう」と思うでしょう。いわゆる、『E=mc2』の「E=m」のところまでは、なんとなく感覚でも想像はつくんです。
問題はその先です。鉄の塊に光の速度を2回かけて、それが偶然エネルギーの総量と一致するなんて、誰も想像できなかった。これを、実験施設も持たない特許庁の一職員だったアインシュタインは、頭の中の思考実験だけで導き出したんです。すごいですよね。
曽志崎:それに1日を費やしたんですね。
榊原:例えば洞窟も、奥の方まで深く深く行ってみると、穴ぐらばかりうろうろしていた時には目につかなかったことにも関心が出てきたりします。「こんな過酷なところで生きている生物は、何を栄養素にしているんだろう」と考えたり、「そんな有機物の獲得方法もあったのか」というようなことがわかったりするんですね。
自営業が組み直すべき「生活の骨格」
曽志崎:ひとつのことを考える日は家にいるんですか、それとも図書館などに行くんですか。
榊原:どちらもありますよ。ただ、頭の中はそういうことでいっぱいにします。普段悩んでるようなことは一切考えない。他のことは頭の中から追い出して、浸るようにします。
曽志崎:でも、社会は回っているので、情報がどんどんバラさんに飛びついてきませんか。
榊原:関係ありません。もちろん仲間と食事したりはしますが、生きていくのに必須ではない時間は、できるだけ浸るようにします。「その奥ってなんなんやろなあ」と妄想するわけです。
村西:バラさんもかつて会社員をされていましたよね。会社員の頃は、仕事の時間、プライベートの時間、平日、休日といった概念があったと思うんです。
私自身も20年近く会社員をやっていましたが、今のような働き方になった時に、良くも悪くもサラリーマン時代のクセが出ました。例えば、平日に趣味のような社会的生産性に関係ない時間を過ごすことに対して罪悪感を抱いたり、逆に休日に仕事をしている時に違和感を抱いたりすることがあったんです。「時間を自分でグリップする」という感覚を持つに従って消えていったのですが、そういう変化はバラさんの中にありましたか?
榊原:ゼロではありませんが、あまりなかったかもしれません。会社員をやっていると、一週間の生活リズムがわりと決まってくるかと思いますが、それが逆にいいことだったりもしませんか。独立した途端に、そもそもの時間の組み立て方で悩んだり、仕事ばかりで以前よりも運動不足になっていることに気づいたりしますよね。生活の骨格みたいなものが一旦なくなってしまうので、自分なりの骨格に組み直さなければならないという感覚はありました。
村西:そうですね。それは時間を要しました。
榊原:シェアオフィスに行って、会社員時代のリズムを失わないようにされる方もいらっしゃるようです。生活の骨格をゼロからデザインし直すというのは、本当に時間がかかる話ですね。
生活の変化に不安や罪悪感をおぼえる必要はない
榊原:引退した人たちも、65歳まで企業戦士として頑張ってきたのに、突然やることがなくなってしまって悩むそうです。旅行に行っても、「俺、火曜日やのに何やってるんや」というような罪悪感がずっとある。それで、また生きがいややりがいを求めて、何らかの活動に参加して行くようです。
曽志崎:ビジネスとは答えのない時間を過ごすことだと思いますが、引退して「仕事」という枠がなくなった後の生活をどう組み立てていくかということも、ある種答えのないことですね。答えがない中で、新しい時間軸を自分の中に設計していくのは、非常に負荷のかかることなのではないかと想像します。
榊原:そうですね。特に罪悪感という問題は意外とシリアスだと思います。本来、罪悪感をおぼえている時間があるならば、骨格の組み直しに充てた方が有意義なんです。
組み立てた骨格が失敗だったと思えば、バラバラにして組み直せばいいんですよ。それを阻む人は誰もいませんし、「こうやって生きていかないと」というのも、今の日本においては思い込みなだけであることも多いです。実は、お金がなくなっても生きていける環境が保証されているという点では、世界でもトップクラスの国なんですよ。
人間は不安に思いたがるものですが、実は思っているほどの不安は9割方実現しないものです。だからとにかく組み直してみて、今日ダメだったら明日は全く違う戦法で攻めてみればいいんじゃないでしょうか。
現代人に必要な「自分の身体をハックする」という概念
榊原:実は朝型も、「朝やった方がいいですよ」と思い込まされているだけで、正真正銘の夜型の人もいるかもしれませんよね。10人に1人か2人は、遺伝レベルの夜型が存在しているのではないかと思います。
人間が草原で生きていた時代のことを考えてみましょう。夜、全員が寝静まってしまう群れは、肉食獣にやられてしまいますから弱いです。つまり、数人に1人は完全夜型の人がいて、目を爛々と輝かせてみんなを守ってくれていたはずなのです。その名残で、完全夜型という人も絶対に存在していると思います。そんな人を、無理に朝型にするのはおかしな話です。
村西:「朝型がいい」ということが、ライフハック的に流行る時期がありました。逆に昔は、睡眠時間が短ければ短いほど仕事しているといった「寝てない自慢」もありましたね。
榊原:『3時間睡眠法』なんていうものもありましたよね。
村西:最近は、睡眠も時間もダイエット方法も、「人それぞれ」が主流です。そうなると、「いかに自分の体をハックしていくか」ということがとても重要となるので、やはりトライアンドエラーが必要なのではないでしょうか。「次はこうしよう」と探すこと自体が、実は生きることそのものなのだと最近強く思うようになりました。自分がグリップして日々を過ごすのは楽しいですね。
パフォーマンスを最大限に高める『9時5時理論』
榊原:僕ね、「9時5時ってすげえわ」と思いました。いろいろな時間骨格の組み立てに挑戦してみた結果、僕自身は大多数の人が属している「やや朝型」的な体質らしいんです。
振り返ってみると、9時から5時までの時間で全力を尽くした時に、最も1日の満足度が高い傾向があったんですね。ただ、これはたまたまマジョリティに属している人の実感です。生来の夜型の人や、夕方から調子が出てくる人には、その人なりのコアタイムがあるはずです。9時5時は、「大多数に属す人たちにとってのベストタイムだった」ということなのかもしれません。
先ほどそっしーさんもおっしゃっていましたが、朝から頑張って夕方あたりでぐっと疲れてくると、そこからは頑張ってもあまり生産性が上がらないことがありますよね。
曽志崎:全然上がりませんよ。
榊原:もしかしたらそっしーさんは、9時5時がぴったり合うタイプなのかもしれませんよ。
曽志崎:そうかもしれません。Googleカレンダーの終わりの時間をもっと前倒ししようかなと思いました。
榊原:9時から自分のノウハウを惜しみなく世間にアウトプットして、得意分野で大活躍する。5時あたりに疲れてくるから、一旦バサッと終わらせて、それ以降はご飯を食べたり、遊んだりする。遊んで脳を刺激して、インプットして・・・とやっているうちに、今度はまた無性に仕事したくなってくる。左へ行き過ぎたら、無性にまた右へ行きたいと思うんです。
そして夜があけて、朝から右にガーッと突き進んでいくと、ヘトヘトになって、また今度は左に行きたくなる。こうやって、右へ行きたい、左へ行きたい、とやりたいことばかり交互に繰り返していると、モチベーションがうまく回っていくんじゃないでしょうか。
村西:そうですね。偏ってしまうのが良くないんでしょう。
榊原:仕事をやりつくすと、無性にリラックスしたくなることがありますが、そんな時はたっぷりとリラックスした方がいいです。すると、今度は罪悪感が出てきて「何かしたくなってきた」という気持ちになるはず。反動の力を使ってまた仕事に戻るんです。どちらかに思い切り振ることが大事ですね。
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