2019.06.21

Airbnb のサービス設計とローマ帝国の統治に見るルール設計の妙 : 個別特徴と全体調和

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世の中の興味深いマーケティング事例や大きな数字、意外な事実など、経営者 榊原直也 のアンテナに留まったビジネス話題をご紹介する『ばらさんのBusiness Talk | バラトーク』。

世界中のホストが宿泊場所に工夫をこらし、ゲストの旅先での満足度の探求に向き合うAirbnb。1つとして同じ間取り、内装がないにもかかわらず、これほどまでに世界の旅人たちを喜ばせるサービス設計の背景には何があるのか? ローマ帝国の繁栄の歴史を支えた統治の仕組みと照らし合わせてみました。 

 

◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人

提供 : データ・サイエンティスト株式会社 
https://kwtool.co/company.html

  • 流行の「Airbnb」ってどう使う?
  • チェックインから室内ガイドまでアプリ上で完結できる
  • 厳しい基準を突破したAirbnbスーパーホストのホスピタリティ
  • ホストとゲストの相互評価でサービスが進化する
  • Airbnbのビジネスモデルとローマ帝国の関連性とは? 

 

流行の「Airbnb」ってどう使う?

榊原: 曽志崎さんが最近Airbnbを使ってみた例では、どんな使い方をされました?

曽志﨑:昨年の9月に大阪に友人と3人で旅行に行ったんですけど、ホテル借りずにエアビーで探してみようかっていう話になって。

榊原:普通のマンションの一室だったんですか?

曽志﨑:そうです。入り口にキーボックスがあって、ボタンをポチポチポチとするとキーボックスが開いて鍵が取り出せて、入ると普通のマンションの一室。室内にはベッドが3つ4つあって、コップやグラス、コーヒーなどのアメニティもちゃんと用意されていました。ソファや洗濯機、お風呂のほか、ガイドマップとかも置いてありました。

榊原:その物件はどこで見つけたんですか?

曽志﨑:Airbnbのサイトです。

榊原:Airbnbのサイト上で物件を選ぶ際に、決め手となった要素は何でしょう?

曽志﨑:まずやっぱり写真ですよね。サイトに写真が10枚くらい載っているので、ゲストがこの場所に泊まったら、どういう時間が過ごせるのかイメージしやすいと思います。その物件は、室内写真がすごく良くて、地下鉄の駅から徒歩2分くらいの位置だったので、決めちゃいました。

 

チェックインから室内ガイドまでアプリ上で完結できる

曽志﨑:それで実際に現地に行くと、ごく普通のマンションが建っているわけです。オートロックもなくて、階段で5階までてくてく上がっていくと、部屋の玄関ドアの前にキーボックスがあるんです。

チェックイン前に、Airbnbのアプリのメッセージで、ホストの方から連絡が来るんですね。マニュアルが送られて来て、「ご予約ありがとうございました。キーボックスはここにありますので、この番号をタイプしてご入室ください。部屋の案内はこうです・・・」など記載されているんです。

榊原:それはAirbnb側がホストに課しているルールなんですか?

曽志﨑:そんな印象ですね。Airbnbはまだ3回くらいしか使ったことないので、すべてのホストがマニュアル提供しているかは不明ですが、そのホストの方はPDFを送ってくれました。

個別のマニュアル以外に、Airbnbの画面上にホスト側が入力するフォームがあり、Wi-Fiの利用方法やパスワード等の室内ガイド、宿泊ルールなどが掲載されています。すそういった意味では、ルール設計は割ときちんとなされていますね。ただ、ゲストとのコミュニケーションについては、丁寧に行うのも最低限で終わりにするのも、ホスト次第ですね。

 

厳しい基準を突破したAirbnbスーパーホストのホスピタリティ

曽志﨑:僕がいつもAirbnbで選ぶのは、5スターのレビューのホストの物件。ある一定の基準を超えると、ホストにスーパーホストというラベルが付くんですよ。

榊原:それはゲストの方々が評価をするわけですよね?「ここはよかったぞー」とか、泊まった後に星を付けるわけですよね?

曽志﨑:そうです。スーパーホストのラベルってかなり厳しい水準なんです。実際に行ってみると、そういったスーパーホストの方の接客たるや本当に素晴らしくて。

今年の2月にロサンゼルスに行った時にも、アダムさんというスーパーホストの物件に泊まったんです。Airbnbのアプリ上でのメッセージもとても丁寧で、「何かあったら連絡してね」って言ってくださるんですね。部屋に行ったら手紙が置いてあって、「気になったことがあったら 、アプリで入力するの大変だから、手書きでいいから何でも書いて」と。

榊原:すごい。ホストによってサービスの質がそこまで変わるんですね。

曽志﨑:こういうホスピタリティって、Airbnbのルールにはないと思います。アダムさんには、いかにゲストに心地よく過ごしてもらうかという、ホストの飽くなき探究心を感じました。帰り際、拙い英語で感謝の言葉を伝えました。

ただ、スーパーホストが、なぜメモ用紙を置くのかというと、サービスを改善するためのフィードバックがほしいんですよね。僕はちょっと足元が寒かったので、「スリッパが欲しかった」というフィードバックを残しました。

Airbnbでは、公開レビューと個別レビューで、ホストの方がゲストを評価するんです。何か自分の中で気になったことを、一言フィードバックしてあげると、ホストから個別レビューで返事をもらえたりします。僕の場合は、「フィードバックありがとう。今後に活かせるからとてもありがたいです」って言ってもらいました。

 

ホストとゲストの相互評価でサービスが進化する

榊原:ホスト側が宿泊したゲストを評価できる。その評価が、他のホストがそのゲストを今度宿泊させるかどうかの判断に活かされる。そういうエコシステムが有効に機能してるわけですね。

泊まる側はよりいいところに泊まりたい、ホスト側はよりいい人に泊まってもらいたい、これが循環するわけですね。そこにフィードバックが加わることで、サービス自体がより良くなっていく。

曽志﨑:「お金を出せばいいとこに泊まれる」という価値観ではなかなか上手く回らないエコシステムかなと思うんです。1泊1万5千円、140ドルくらいの費用で2泊したので、その金額出せば、ロサンゼルス市内の一般的なホテルに普通に泊まれるんです。でも、ローカルなロサンゼルスの民家は普通のホテルでは体験できませんからね。

Airbnbは、ゲストがお金さえ出せば、また同じ所に泊まれるというわけではないんです。ゲストとホストが「ありがとう」とお互い言える関係性がそこにあって初めて成立する。

ゲストである僕のレビューも良くなることで、別な都市のいいなって思った物件に泊まりたい時、そのホストさんが僕の過去のレビューを見て「ああ、この人だったら安心して泊められるな」と思ってもらえるわけです。

特にスーパーホストにもなると、たくさんの予約リクエストが来るじゃないですか。そうすると「誰を泊めてあげようかな」と選ぶ側になりますからね。

僕たちがスーパーホストを選ぶように、ホストもゲストを選ぶ。これは至極当然な意思決定じゃないかな。

そういったことが自然とAirbnbの中で起こっているっていうのは、これはおそらく自然ではなくて、Airbnbの思想だと思うわけです。

 

Airbnbのビジネスモデルとローマ帝国の関連性とは? 

榊原:曽志崎さんが言う、巨大企業になったAirbnbのビジネスモデルとローマ帝国との関連性とは?どこに共通点が見つかるというのですか?

曽志﨑:ローマって、ローマ市民と、征服されてローマ帝国の一部になった他の国の人々がいるわけです。その征服された側の人々も、ある一定のルールさえ守ればどんな宗教を信じてもいいし、一定の基準を満たせばローマ市民権も手に入れることができる。

その国に生きる多様な人々の権利をとても尊重して、その人のアイデンティティを消すことなく活かしながら、「国の構成員として精一杯生きてください」というメッセージに繋がるルールだと思うんです。 

一方、Airbnbを見てみると、世界中のいろんなスタイルのお家やアパート、マンションなど、インテリアもまちまち。「こういうデザイン、レイアウト、色、カーテン、家具にしてください」ってルールは、1個もないはずなんですよね。

膨大な数のAirbnbの物件は、1つとして同じものはない多様性の中でゲストを楽しませる。この思想にみんなが前向き取り組んで、違った個性が共存しながら、プラットフォームが成り立っている。この光景が僕の中で、Airbnbとローマ帝国に同じような設計、近い視座があるんじゃないかなと感じたんです。経営者と執政官の立場では、100%マッチするかはわからないのですが・・・。

榊原: 面白い抽象化ですね。普段抽象化していないレベルまで、ものごとを抽象化して、抽象化したところが一致すると、脳が必死になっていろんな引き出しを開けようとしますよね。

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この番組のパーソナリティ

榊原直也

榊原直也

データ・サイエンティスト株式会社 代表取締役社長

Webメディアと検索順位との関係を数学的に解き明かす技術で複数の特許を持つ。その技術を駆使したサイト診断サービスは、その効果が口コミで広がり、いまや著名企業が何ヶ月も待つほどの人気サービスに。プライベートでは、難しい分野でもわかりやすく楽しい雑談ネタにしてしまう「バラトーク」が、学生、主婦、ビジネスマン、経営者など幅広い層に大人気。モットーは「楽しく!わかりやすく!」。

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