世の中の最新の事例やファクトデータ、意外な事実など、経営者 榊原直也 の心にビビッと留まった話題をご紹介する『ばらさんのBusiness Talk | バラトーク』。
今回のテーマは、構造物とクリエイティブについて。建築物の物理的な構造物から電子的な構造物へ、さらには人間の脳が生み出すクリエイティブの可能性まで、カオスに迫ります。
◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人
提供 : データ・サイエンティスト株式会社
https://kwtool.co/company.html
- 日本人が知らない『建築大国日本』
- 世界と日本の建築シーンの違い
- 電子空間における構造物について考える
- 人間の脳が生み出すカオスとクリエイティブ
- 未知のクリエイティブ領域への期待
日本人が知らない『建築大国日本』
榊原:世界的に有名な建築賞の1つ、プリツカー建築賞。この賞を世界で最も多く受賞している国が、日本だということをご存知でしょうか。
曽志﨑:そうなんですね!知りませんでした。
榊原:これは建築業界におけるノーベル賞、アカデミー賞に匹敵する非常に栄誉ある賞です。世界中のプリツカー賞の受賞者約50人のうち、なんと8人が日本人。しかし、民放のテレビ番組やニュースではなぜか大々的に扱われず、日本国内ではあまり知られていないのが現状です。
むしろ世界の国のほうが騒いでいて、「日本はなんて建築物のすごい国なんだ」と言われています。確かに地震大国で、構造設計には元から定評があった日本。そこに近年は日本人のデザインセンスも伴ってきて、ここ数十年で日本人建築家の評価はうなぎ上りなんです。
イギリスにもプリツカー賞と同じクラスの有名な賞があり、こちらも日本人が受賞しています。長谷川逸子(はせがわ いつこ)さんという伝説の女性建築家です。世界中の有名な建築賞を総なめとは言いませんが、それくらい日本人が多く受賞しています。
世界最高峰の建築物が点在する日本ローカル
榊原:諸外国の優秀な建築士の多くは、大手の建築事務所に所属して、大プロジェクトに関わります。その一方で日本は、1級建築士の資格を持つ30万人のうち、大手設計事務所に勤めているのはわずか3000人。残りのほとんどが個人事務所などの中堅・小規模な事務所に所属しています。
それによって、日本の建築設計業界にものすごい多様性が生まれているんじゃないかと思うんです。事務所それぞれのカラーを打ち出して、大手が小さな建築事務所にも、実力さえあれば発注をする。相談したり、デザインだけお願いしたりするようなこともある。これはちょっと面白いですよね。どうしてこんな大事なことをメディアで取り上げないのか不思議です。視聴率も大事でしょうけど、紹介すべきですよね。
さらに日本の著名な建築家の方の作品は、意外なところにあることも多いんです。たとえば大分県の大分図書館。これはプリツカー建築賞の受賞者の一人である、磯崎新(いそざき あらた)さんの作品です。あとは秋吉台の国際芸術村や、奈良の百年会館、各地にある美術館など世界的建築家の作品が、地方に散らばっています。
世界的な建築家の作品を見に行くつもりで、いろんな地域に足を運んでみるのも面白いですね。
電子空間における構造物の魅力とハードル
榊原:近年では、建築物のような物理的な構造物だけでなく、電子的な構造物も増えていますね。たとえばFacebookやTwitter、InstagramといったSNSも、構造物の1つだと思うんです。クリックして遷移先があって、そこにまたいろんな情報群があって。さらにその情報群と親和性の高い別の情報群が、後に控えている。こういった構造物に、より多くの人が接することができる。いい時代が来たなと思っているんですよ。
曽志﨑:人間の想像力が、サイバー上の構造物に影響を受けているなと思うこともあります。たとえばメッセージチャットやファイル管理など、同時に複数のタスクを並行して管理できるツールや機能があります。ツールを使いこなして慣れている人間からすると、こんなに便利なものはないと思うんです。でも、サイバー空間での情報構造に慣れていない方は、戸惑いを覚える。
自分にとってはすごく整理整頓されている情報構造でも、慣れていない方にとっては難解で、思考が止まってしまう。慣れるまで、すごく時間がかかるんですね。でも慣れると、今までより遥かにスムーズに情報が流れる。
そうやって脳みそが新しい構造に適用していく過程は、人間の想像力がサイバー上の構造物に影響を受けて思考していく、態度変容かなと思っています。
人間の脳が生み出すカオスとクリエイティブ
榊原:たとえば脳でイメージしたものを、そのまま映像に写し出すとしたら、意味不明のぐちゃぐちゃな映像になると思います。一方、建築物やWebメディアの構造物は、頭の中で考えたことを、ものすごく単純化してわかりやすく、シンプルにしている。単純化のレベルで言ったら、脳で想像したことの1/100ぐらいになってるんじゃないですかね。
実際頭の中で何が起きているのか調べると、電気がどうとか、シナプスがどうなってるとか。複雑なことがたくさん起きてるんですよね。でも、リアルな空間では、複雑な情報を脳が処理しきれない。このギャップって不思議ですよね。
曽志﨑:寝ている時に見る夢もそう。夢は、脳の中がある種映像化されていて、整理されていないカオスな状態を映し出していると思うんです。
榊原:そこでは明らかに論理的にはおかしなことが起こっているのに、夢の中の自分は、当然のように受け止めていたりする。夢の中では脳の何かがオフになっているんじゃないかと思うんです。常識みたいなものを判断する脳の部位が、麻痺しているのかな。
日本人は発想が貧困だとか言うけれども、僕らは日常的に無意識の中で、クリエイティブなことをやっている。だから考えるというよりは、脳についているブレーキやOFFスイッチがうまく発動して、理性を抑制した時に生まれるんじゃないかと。
常識を超える力は、誰しも全員にあるんです。
「つくらない」というクリエイティブのカタチ
榊原:クリエイティブといっても、本当にいろんなものがあります。おもしろいのは、ダンス表現がうまい人でも、絵がめちゃくちゃヘタとか。イラストチックなヘタウマ系の絵はうまいけど、写実的な絵は描けないとか。そういう人もいたりするわけです。
あるいは、実際に何かを作るアーティスト的なクリエイティブもあれば、プロデューサーやディレクター的なクリエイティブもある。特に現代美術なんかは、単なる絵描きやモノづくりというよりは、別の要素を加えた作品も多くありますよね。
曽志﨑:ありますね。以前ニューヨークの現代美術館で、古びた子ども用の自転車が30台くらい、積み重ねられているだけという作品があったんです。これってある種、自転車を置いているだけじゃないですか。その自転車を自分で作っているわけでもないし。でもそれで何かを表現しようとしてい行為自体がアートだし、クリエイティブです。
その作品は、ニューヨークのある町で住民たちが立ち退きを迫られた出来事をきっかけに生まれ多そうです。、そこに住んでいた子どもたちも、みんな居なくなり、子どもたちが使っていた自転車だけが取り残された。そういう昔の風景と子どもたちに思いを馳せて、自転車を積み重ねるインスタレーションを作ったと。
榊原:何か伝えたいものがあって、アーティストが表現したと思うと、これも立派なクリエイティブの1つです。たぶん人間がまだまだ認知できていないような、未知のクリエイティブ領域があるのかもしれないですね。
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