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消失が起きつつある金融と非金融の境目。LINE PAYにZOZOTOWNのつけ払い、アマゾンやイーベイによるマーチャントへのレンディング、サプライチェーンで資金繰りをサポートする商社金融 、Google Pay にApple Payの出現など、予想外のテクノロジーの出現により、新しい金融の潮流が生まれている昨今を、金融業界における「越境」と仰る大前さん。あらゆるプレーヤーが流れ込み、ニュープレーヤーを押し返す意欲と経営力が求められる銀行を切り口に、コンプライアンス、社会の公器として果たす銀行の役割についてディスカッションしました。

 

◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人

◇ ゲスト 大前和徳さん

提供 : データ・サイエンティスト株式会社 
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  • 金融になだれ込むニュープレイヤー。金融と非金融の境目がなくなる
  • 銀行・加山雄三 VS ロックスター・フィンテック。勝負の行方は?
  • 100円で始末書。金融機関のコンプライアンス意識
  • 預金こそが銀行最後の砦。求められる社会的公器としての責任
  • 自由競争しないと、顧客目線のサービスは生まれない
  • 自主規制が新しい金融サービスのチャレンジを阻害する
  • ルールに守られてきた金融機関、活路はどこに?

金融になだれ込むニュープレイヤー。金融と非金融の境目がなくなる

榊原:最近予想外のテクノロジーがいろいろ出てきました。たとえばブロックチェーンもそうでしょうし。金融業界にいた立場から、そういう変遷を見て、どう感じていらっしゃいます? 新しい金融の潮流、これからの銀行業界、特に地銀などの見通しについてお聞かせもらえますか。

大前:僕が感じているのは、金融の「越境」がものすごい勢いで起きていて、非金融と金融の垣根がどんどんなくなってきていることですね。

たとえば昔は、送金、為替、融資などは銀行の仕事でした。でも今は金融機関じゃない会社が、実質的な金融サービスを提供することが増えてきて、銀行や金融機関じゃなくても、金融サービスをどこでも受けられるようになってきている。

LINE PayとかZOZOTOWNのツケ払い、あるいは小さな広告代理店などの金融支援、資金繰り支援がありますね。あと消費者に対しても、消費者金融って昔からありますが、消費者の資金繰りをサポートして、サプライチェーンの中でお金をうまく回してあげたりすることもありますね。

Amazon レンディングなどで、AmazonやeBayが販売業者にお金を貸したり、Apple PayやGoogle Pay、なんとかペイも山ほど出てきて、みんな金融をやりたがってきてるんですよね。

それは何が起きてるかというと、「戦国時代の甲斐国(かいのくに)に、武田信玄が死んだ瞬間に敵が峠を越えてなだれ込んできて、甲斐国を制圧された」みたいな感じかなぁと。今の銀行は、武田信玄が病没した後の甲斐国状態で、みんながそこにウワーッとなだれ込んできているイメージです。

榊原:なるほど。

大前:地方銀行の話がありましたが、この間北海道で地元の銀行と話をしてきたんです。銀行って、看板や資金力、ネットワークや顧客もあるし、あらゆるものを持っているんですが、ほかのニュープレイヤーがどんどん押し寄せてきていて、それを押し返す意欲と経営力がないと、確実に滅ぼされるだろうなという気がしますね。

 

銀行・加山雄三 VS ロックスター・フィンテック。勝負の行方は?

曽志崎:この時代の金融の将来について、どのように見ていらっしゃいます? 今いろんなプレイヤーが、金融・非金融の垣根を超えて、どんどん押し寄せているなか、最後は誰が生き残るのか?

大前:そのことについて、最近『ダイヤモンド・オンライン』で、ちょっとしたエッセイを書いたんですけど、まだ勝負はついてないと思ってるんです。

なぜなら、銀行の持っている権力はとてつもなくデカくて、新しいフィンテックのサービスが出てきてるといっても、まだパイを取りきれていないわけですよ。

金融のニュープレイヤーって、売れ始めたロックスターみたいなもので、「加山雄三のように、50年歌い続けて今でも歌ってられるのかお前?」という感じなんです。銀行・加山雄三 VS ロックスター・フィンテックの勝負と考えると、ロックスターが加山雄三になれる可能性はいっぱいあるけど、加山雄三も持ってるレガシーを使えば、また再度戦うチャンスはある、なんて思ってます。

ただ、銀行の経営環境って信じられないくらい激烈に変わっているんで、本当に経営力勝負かなとは思います。これから銀行のトップを目指す人には、「最後の頭取になるかもしれませんけど覚悟ありますか?」と聞きたいくらい、うかつにならない方がいいですね。銀行が瀬戸際になるかもしれないタイミングで、銀行経営を担わなきゃいけない気がするので。

 

100円で始末書。金融機関のコンプライアンス意識

榊原:大前さんは、金融分野からキャリアをスタートされて、現在ベンチャー企業の目利きをされたりアドバイスされる時に、金融業界にいた時のリテラシーがこういう局面に役に立つんや、と思うことって多いですか?

大前:えーっと、一番感じるのはコンプライアンス意識。こう言うと変なんですけど、銀行に勤めている時に感じたことは一度もなかったんですが、辞めてから銀行員というのは基本まともな人が多かったなぁと思うんですよ。

榊原:それはコンプライアンス意識が高いという意味で?

大前:与えられた仕事を、ちゃんとルールに則って実行するということですね。銀行に入って真っ先にやらされることは、規定集という銀行のルールブックを覚えることで、それに基づいて行動するわけです。管理教育の学校みたいな所のわけですよ。そういう徹底をされるんで、不正とかってあんまり起きにくいんですよね。だって、引き出しに100円玉入れても始末書ですよ。

榊原:えー、100円で!

大前:そうですよ。これ銀行の金なのかお前個人の金なのか、分からないから、金は絶対引き出しに入れるなと。引き出し全部に鍵があって、朝出勤したら解除、帰る時には施錠する。

いろんなベンチャーに行きながら分かったんですが、施錠意識が高い人って元銀行員だったりするんですよね。あとは仕事でいろんな方とお会いする時に「元銀行員です」って言った瞬間に相手が安心する。

榊原:おお~。(笑)

大前:肩書きもなく仕事してるんで、最初うさん臭いやつだなぁと思われるんですけど、銀行に勤めてましたって言うだけで安心されることは多いんで、銀行にいてよかったなぁとは思いますね。

僕なんか、大学卒業して30年近く経つにもかかわらず、銀行員の期間ってたかだか6・7年なんで、偉そうに「元銀行員です」と名乗る資格は本来ないわけですが。

 

預金こそが銀行最後の砦。求められる社会的公器としての責任

榊原:金融庁や国の政策として、銀行にしかできない業務って最後に何が残るんですかね?これはほかの人たちは参入したらアカンよみたいな。

大前:金融庁の中も、もはや銀行・証券・生保みたいな垣根は取っ払おうと動いてるんですよ。融資をしてる会社として、銀行もノンバンクもソーシャルレンディングも、同一のルールで規制した方がいいんじゃないかという流れがあるわけです。

投資商品を売っている会社は、ソーシャルレンディングも証券会社も、場合によっては生保やロボアドバイザーも、同じルールで規制した方がいいという議論です。そういう点では、当局の姿勢は変わるし、地域性のルールも変わろうとしてるんですが、そうは言っても僕は銀行に対しての期待値というのは、めちゃめちゃ強いと思いますね。

というのは、僕も金融機関の経営をしていたから感じるんですが、金融機関って民間企業のようであって民間企業じゃないんです。

榊原:そうなんですか?

大前:違いますね。社会的な公器なんですね。

金融機関って、お金を持ってる人とお金を持ってない人、企業だったり個人だったりするんですが、この2つのパーティー間のお金を融通することが役割なんです。保険というのも、みんなでお金出し合って、死んだ時や傷害が起きた際のお金を融通する。

証券は、個人投資家や機関投資家からお金集めて、上場企業などに資金調達のお手伝いを資本市場で行う。銀行は預金で金を集めて、企業や個人にお金を貸す。いずれもお金の流れを作る社会的なインフラなわけで、民間企業での金儲けのように欲を出しすぎると、当局としてはふざけんなみたいな話になるわけです。

榊原:銀行的業務に参画してくるいろんな金融プレイヤーがいる中で、銀行のみが確保し続けられる、国からの命で続けられる業務って何が残りそうですか?

大前:やっぱり預金を取り扱えることですよね。日本の会社でも海外の会社でも、みんな銀行になりたがる最大の理由は、預金を確保したいから。預金を取り扱うからこそ、当局も猛烈に規制してくるわけです。

ただ同然で個人のみなさんからお金を預かって、しかもそれを銀行の自由な裁量で証券に投資したり誰かに貸す。「バラさんすいません、この人にお金貸そうと思うんですけど、預金使わせてもらっていいですか?」って預金者にいちいちお伺い立てずに。

榊原:「実は預金の8割方国債買ってるんですけど、いいですかこのままで」みたいな。(笑)

大前:うんうん、そんなお伺い立てないでしょ。それは銀行がお伺い立てなくてもいいと許されているからなんです。

榊原:銀行法で?

大前:そうです。それが預金というものなんです。要するに、使途不明でも、利用自由なコストの安いお金を市中から集められるということ。

榊原:それほかの企業にはできませんものね。

大前:できない。それやったら出資法違反とか法令違反になっちゃう。

榊原:いろんな業種が金融業にどれだけ参入してきても、銀行が銀行たるゆえんの象徴的なものというのは、まさに預金が扱えるかどうかだと。

大前:為替とか、コンビニでの公共料支払いとか、飲み代清算をアプリでやれる金融サービスはありますよね。でも、預金を取り扱うことだけは、銀行しかできない。預金があるから銀行は金貸せるんですよね。

信用創造というんですが、たとえば預金が100しかなくても200までお金を貸せる。だって今すぐ100のお金全部引き出せられないわけですから。榊原さんから100もらって、曽志崎さんに150貸しました、みたいなこともできるわけです。そうして50ぶんの信用が生み出されたっていう信用創造、これ銀行だからできるんです。

その150を使って、ソシさんは事業に投資するとか、飲み代に充てるとか、何でもいいんですが、増えた50ぶんが経済でお金として流れるわけです。そうやって新しい経済的価値が、預金を起点にして生み出されて、お金がグルグル回っているというわけです。

曽志崎:それを社会の公器と先ほどおっしゃった。

大前:そうです。それが許されるのは社会の公器じゃないと。銀行の経営者が銀座で飲んでますとか、社員にボーナスを山ほど払ったとか、保養所めちゃめちゃいいの造りましたとか、あるいは自分の関連企業にばっかり融資するとか、それってどうなの?って話になるじゃないですか。

だから、銀行や金融機関が無垢な個人の方々からお金を集めて、それを運用する責任って重いんですよ、ということで当局もうるさいわけです。コンプライアンス意識も要求されるんで、ギラギラしてる商売気満々の人間が入り込みすぎるのはまずいと。

自由競争しないと、顧客目線のサービスは生まれない

榊原:そこをガツンと改革しちゃうと、国ってどうなっちゃうんでしょうね。たとえば金融庁が「オレたち気が変わった。今日から Facebookさんもみなさんも、預金業務やってよし!民からお金集めてよし!ルールはあるけど銀行みたいにいっぺんやってみて」みたいに言い出しちゃうと。

大前:それはね、今の社会の公器の議論に先にあるすごく大事なポイントだと思ってるんです。金融庁長官の座談会にオーディエンスとして参加させてもらったことがあって、そこで金融庁長官に質問したことがあるんです。金融庁が、「顧客目線」に立った金融サービスを提供しなきゃいけないということをやたら強調していたので。

榊原:意外ですね。

大前:なぜかというと、顧客目線に立たない金融機関目線、自己目線の営業行為があまりにも散見されてけしからんと。当局は、金融機関はもっと顧客目線に立って経営しなさいと指導していると。そこで何を質問したかというと、顧客目線に立つというのはどんな業種であれ民間企業では当たり前の話で、当局にとやかく言われることではないんじゃないですかと。

榊原:ほう。

大前:その時言ったんですけど「ラーメン屋っておいしいラーメン作らないとお客さん来なくなりますよね。だから美味しいラーメン作ろうと頑張るわけじゃないですか。誰に強制されるわけでもなく」。一定のルールはもちろん必要だけれども。

榊原:もっと自由競争させろってことですか?

大前:そうですよ。普通にダメなところが淘汰され、いいところは生き残る、それが本来の民間企業のあるべき姿じゃないですか。それが結局良いサービスに繋がり、顧客満足に繋がり、社会全体の福祉が増大することになる。当局が規制してこうやれってやってる限りはダメなんじゃないですかと。

榊原:なるほど。(笑)

大前:だから、「やめた~」と言って、ルールのもとで自由競争でやった方が、我々に良いサービスが与えられるんじゃないか。金融機関全体がなんでやらないんだろうという気がして。

榊原:大前さんのその提言に対して、金融庁の反応はどんな感じでした?

大前:これは実は、先ほど言った社会の公器というテーマもあるから、中々そうもいかないんですよね。僕はその答えは知りつつも、その場にゴールドマン・サックスとか錚々たる人達がたくさんいたんで、あえてその質問ぶっ込んだんですけど。(笑)

金融庁は「おっしゃる通りです」と言ってましたよ。「僕らが教えなきゃいけないのは、おかしいと思いますが、でも中々ねえ~、難しいんですよね~」みたいな大人の回答してくれましたね。

自由競争の結果、金融機関が淘汰されちゃうと、淘汰されたところのお客さんは被害受けますからね。「預金が焦げ付きました。あなたの定期預金の1000万が500万になります、ごめんなさい」。これは避けたいというのが当局の基本的な考えなんで、完全に『ワイルド・ワイルド・ウエスト』みたいな世界にはできないわけですよ。

榊原:もうやっちゃえばいいのになぁ。

大前:そうなんですよ。だって、みんな旨いラーメン屋には行くんで、美味しいラーメン作るサービスをやってみろっていう。根本的には、そこしかないんじゃないかなっていう気がしますね。

榊原:ある政策を打つと、ワーッと盛り上がるけどリスクも増えるわけでしょ。すると、3年か5年社会に遊ばせといてリスクを高めて、次は緊縮・引き締めに向かわせる。緩和と引き締め自体を政策として決議するわけにいかないんですかね。

たとえば、超緩和時期を3年設ける - その後は超引き締め時期を3年設ける - その後また誰でも銀行業に参加できるようにする - また3年間引き締める。これを10回繰り返します、と決めるのはどうなんですかね。

大前:ああ、面白いですね。意図的にはやってないですが、振り返ると結果的にそうなってるのは感じますね。

榊原:政権交代という形でそれを行う国もありますよね。緩和すべきだ、引き締めるべきだという二元論は、なんか違うような気がしてるんですよ。緩和させた後引き締め、引き締めた後緩和させ、合理的な頻度でこれを繰り返すべきだと。

大前:なるほどね。緩和した後で何か事故が起きた時に、当局はビビるわけです。しまったー!緩和させた後に事故起きたー!と。

仮想通貨がいい例ですよ。コインチェックでお金流出しましたみたいなね。最初は完全に緩和して新規参入どんどん促して、みんなテレビCMをバリバリ打って、盛り上がりに盛り上がったところで、北朝鮮かどっか分かりませんけど何百億円も抜かれた。そこで、これはマズいでしょうと、当局がガチーッと引き締めに走っちゃった、後追い的な感じでね。

榊原:何かが起こるであろう事は当局も予見してるんでしょうけどね。だからこそ、状況が見えるまでは一時遊ばせてるのかもしれませんけど。

大前:それを言うと、僕はどちらかというと常に後追いだと思いますね。金融庁は予見するところまでの情報収集能力を持ってないですよ。

なぜなら監督方針の中で、今後どうやって監督していくかという部分には「顧客からのクレームをベースに対応する」って書いてありますから。金融庁は自ら情報収集するんじゃなくて、顧客からなんらかのタレコミがあってそこで初めて動き出す。

榊原:まあ、確かに予見的に動きすぎても要らぬ規制を増やすことになりかねませんしね。ある意味それはいい頃合いなのかもしれません。

 

自主規制が新しい金融サービスのチャレンジを阻害する

大前:そうですね。非金融の人たちが参入することがすごく大事かなあと思うのは、金融機関の人達があまりにも金融庁のもとでの仕事のやり方に慣れすぎていて、もっと違う目線で仕事をしようとすることができてないことですね。

その時の金融庁長官との座談会で、ある日本の大手銀行の方が質問したんですね。「新しいことをやろうと思うんですけど、銀行内のコンプライアンス側から、それは法令違反に当たるかもしれないから、やっちゃダメだって止められるんです。どうしたらいいんですか?」と半分愚痴みたいな感じで言ったんです。

それに対して金融庁長官は何て答えたかというと「法律に書いてないことはやっていいですから。みなさん拡大解釈して、これもダメなんじゃないかっていうふうに考えすぎです。書いてないことはやっていいんです」と。

榊原:薬機法なんかもそうですね。薬品や健康食品メーカーさんが、おそらくこれはマズいだろうと忖度しすぎて、ユーザーのことを思えば、本来書くべきことや貼るべきリンクが、Webサイトからものすごく減らされてますよね。これも今おっしゃったのと似たようなことだと思います。

大前:忖度というか、自主規制的な意識ですよね。自主規制的に自分たちで自分たちの首を締め付けていて、銀行の中にもう一つ勝手に金融庁が出来上がってるみたいな。法律に書いてないことはやっていいんだ、っていう意識で動けばいいんですけどね。

榊原:法律をかいくぐってビジネスチャンスをつかみ取っていこうというタイプの人たちと、書かれてもない法律まで想定しながら、その狭い範囲内で戦おうとする人たちと。これまあ、両方混じってる組織が最強なんですけど。

大前:銀行が今後どうなるかというと、先ほど言った、「勝手金融庁」が中にいると、新しいことができない可能性がある。自分たちの持っている経営資源がものすごくリッチであることを認識して、自らの強みに特化して新しいことに挑戦すれば、復活することができるのに。もったいないですね。

榊原:なるほど。「勝手金融庁」の存在を、金融庁の長官自らが憂うという構図だったわけですね。

大前:そう。そういう感じでした。

曽志崎:大前さんはその話を聞いて、銀行に何かまだちょっと可能性あるかな、期待持てるかなっていう気持ちも持たれましたか?

大前:そうですね。あと金融庁は最近 Googleとかに研修行ってるらしいんですよ。

榊原:何の研修に行くんですか?

大前:新しいイノベーションを生み出す組織を「勉強して来い!」と、渋谷あたりに若いスタッフをどんどん送り込んでるらしいですよ。

榊原:素晴らしいですね~。ぜひもっとやっていただきたい。そういうことは相当やってるんですか?

大前:うん、そうだと思います。

榊原:問題はその後ですよね。その持ち帰った知見が、うまく産業界に還元されていくのか。

 

ルールに守られてきた金融機関、活路はどこに?

曽志崎:大前さんの銀行のキャリアで印象付けられたというコンプライアンスですが、コンプライアンスを既存のルールとして守らなきゃいけない決まりと捉えるか、社会の公器としての役割を果たすためにあるんだと捉えるか。それ次第で、意欲の持ち方や動きやすさ、銀行の役割への向き合い方って全然変わってきそうですね。

大前:おっしゃる通りですね。コンプライアンスの話が出たんで、どこまで生々しい話をここでしていいのか分からないですけど…。ゴールデンウィーク明けに、久しくお付き合いしている先輩が会いに来られたんですよ。

外資系の証券会社の社長も務められた証券界で長く活躍された方で、何かビジネスやろうよって、何度か一緒に企画書を考えたり、飲みながらビジネスプランを考えたりした仲なんですけど。

しばらく連絡取れなかったんですが、あるベンチャー企業に上場請負人みたいな形で入られていたんですね。久々にお会いしたら、「いやぁ僕ね、実はその会社辞めました」って言うんですよ。「え、どうしたんですか?」ってなって。

彼曰く、「僕は上場のために、知り合いの監査法人を連れてきて、主幹事の証券会社とのコミュニケーションも全部やって、上場準備のための足並みを揃えてきた。上場するためにはコンプライアンスも大事だから、勤怠管理、セクハラ・パワハラを含めた、会社の綱紀を正すようなこともやってきた。そしたら怪文書が社内で出回り始めて…」と。

榊原:ええっ?

大前:「セクハラ・パワハラを本当にやってんのはお前だ!」みたいなね。どうやら、セクハラ・パワハラで懲罰を受けた人間が、腹いせにそういうことを始めたらしくて。

最終的に彼は取締役会から追い出されちゃって。あと、自分がつくったアドバイザリーボードに彼が連れてきた顧問がいたんですが、彼らが銀座での何十万という飲み代まで会社に請求してきたんですよ。それをおかしいと指摘したら、「アングラ雑誌のライター雇って変な記事書くぞ」と脅しをかけてきて。そういう経緯から、社長も彼を置いおけなくなって、結果辞めましたっていう話です。

その会社は金融機関じゃなくてベンチャー企業だったんですが、「大前さんね、僕は今まで金融機関にいて、法律にがんじがらめで嫌だなあと思ってたんだよね」って話になったんです。僕も当局とのいろんなやり取りの中で、行政処分を受けたりしてきたんで、当局のルールとか、もうウンザリしてたんですよ。

そこで彼がいみじくも言ったのは、「金融機関にはルールがあるから、変な不正とかを取り締まるような自浄作用があった。自分たちは金融庁の法律で縛られてるんじゃなくて、守られていたんだ、ということに金融以外の会社に入って初めて気付いた」って。

金融機関で彼のいた会社のようなことが起きたら、場合によっては当局にレポートいっちゃって、「そんな変な役員は首切れって」そこまで介入してきますからね。

榊原:ちょっと普通の企業では想像つかない感じですね。

大前:僕は「なるほど」と思って。お金で会社を食い物にするとか、自分の社員を好き勝手にするとか、ジャングルのハイエナのようなルール無用の世界が世の中にはあるんだと、彼も驚いてました。

コンプラ意識って当たり前だと思って仕事してきて、当たり前じゃない世界が上場準備の会社にあったんですよ。「それって上場無理じゃないですか?」と聞いたら、「いや、無理だと思いますよ」と彼も言ってましたけどね。

曽志崎:でも、ある種そういう会社が、今後の金融の規制緩和で、たとえば銀行の預金が持てるようになる可能性も、あるわけじゃないですか? 

大前:その通りなんです。だから結局これは先ほどの、規制と緩和を周期的にやろうかってバラさんお話されましたけど、これは性善説で考えるか、「人は悪さをするもんだ」という性悪説に立つかということがあって。緩和の時期ってのは、わりと性善説に立つんですよ。

新しいサービスが生まれると、それで世の中が便利になるよね~となるじゃないですか。ソーシャルレンディングも仮想通貨もそうだったけど、でもその中でルールを悪用する人間が出てきて、それが表ざたになった時に規制が始まるんですよ。もう性善説は無理です、悪いことが起きる前提で考えてやってくださいと。

曽志崎:金融庁の「法律に書いてないことはどんどんやってください」と、ある意味緩和してるように見えて、その先の規制もきちんと見越してのコメントなのかな。

大前:政策の規制というのは、法律だけでなく、布令、省令、付則とかいろんな細かいルールで縛ってくるわけですけど、その隙間隙間をね、自由に考えろっていうふうに言ってるんですが。

そうは言っても、こっちに回り込んでみたら行き止まりだったとか、逃げ道がなかったりすることは結構多いんですよね。(笑)

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この番組のパーソナリティ

榊原直也

榊原直也

データ・サイエンティスト株式会社 代表取締役社長

Webメディアと検索順位との関係を数学的に解き明かす技術で複数の特許を持つ。その技術を駆使したサイト診断サービスは、その効果が口コミで広がり、いまや著名企業が何ヶ月も待つほどの人気サービスに。プライベートでは、難しい分野でもわかりやすく楽しい雑談ネタにしてしまう「バラトーク」が、学生、主婦、ビジネスマン、経営者など幅広い層に大人気。モットーは「楽しく!わかりやすく!」。

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