世の中の興味深いマーケティング事例や大きな数字、意外な事実など、経営者 榊原直也 のアンテナに留まったビジネス話題をご紹介する『ばらさんのBusiness Talk | バラトーク』。世の中の興味深いマーケティング事例や大きな数字、意外な事実など、ビビッときたものをご紹介する番組です。今回のテーマは、有能な社員が陥りやすい落とし穴について。周囲からは羨望や期待のまなざしを受ける社員はなぜ「できない」状態になるのか。原因から救済法まで考えてみたいと思います。
◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人
提供 : データ・サイエンティスト株式会社
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- その有望な社員は、本当に「できる」のか?
- 期待と実力のギャップに苦しむホープ社員の孤独
- 行き詰まる時におこる不思議な脳のストレス反応とは?
- 外部パートナーの率直な意見が現状打破の突破口になる
- スピード優先と質重視の狭間で苦しむAさんのジレンマ
- プロジェクト成功のは、経営者だけが握るメスにあり
有望な社員の「デキる」は、本当か!?
企業で社長直轄のプロジェクトを始める時、どんなメンバーをアサインし、どんな風に進めていくのか、悩ましいですよね。
例えば、異例の組み合わせを狙ったメンバー2人をアサインした場合。Aさんは有望で期待の若手社員。一方で、普段はパッとしないが、稀にすごい能力を発揮する社員が、Bさんです。
この場合、プロジェクト成功の鍵を握るのは、Aさんではなく、実はBさんにあります。経営陣が、Bさんからプロジェクトの進捗やAさんの仕事ぶりへの感想などの情報を得ることが重要なのです。
なぜBさんからの情報が重要なのか。それは、プロジェクトを成功に導くためだけではなく、期待の若手社員Aさんを真っ当に育てていくために周囲の声が不可欠だから。
周りから評価されているAさんは本当に優秀なのか、見極める必要があるのです。
期待と実力のギャップに苦しむホープ社員の孤独
例えば、普段我々が関わっているwebメディアの集客改善プロジェクトには、Aさんのようなタイプの人がしばしばアサインされます。社長から可愛がられていて、期待されていて、コミュニケーション能力もそこそこ高くて、人柄も良い。
「あの人なら、こんな細かいこと言わなくてもいいだろう」
有能だと見られているが故に、Aさんみたいなタイプは周りの人からのフィードバックを得にくいのが実態です。
ホープ社員への過度な期待が見過ごしを助長する
先日僕がお会いした社長さんも、自社のプロジェクトに一番可愛がっている社員をアサインした一人でした。会議に同席するたびに、プロジェクトの進捗が良くないと思っていたそうです。ところが、社長はこの事態を「彼は頑張っているし、誠実だし、きっと大丈夫だろう」と、何度もスルーしてしまう。
他の社員も違和感を感じながらも、有能な人が任されている社長直轄プロジェクトなので、意見できないんですよね。そのために長期にわたって深刻な状態が見過ごされてしまいます。
Aさんが100%の力を発揮できない理由
Aさんが置かれた境遇もなかなか辛いんです。周囲から期待されているので、必死に頑張ろうとします。でも、初めて取り組むプロジェクトの作業や聞いたこともない専門用語、あまりにも煩雑な風景が目の前に広がっている現状に、呆然としてしまうんです。
Aさんが力を発揮できない背景には、当事者意識の不足があります。ある日突然「これお前のプロジェクトだから」と言われても、心の底からコミットできないんですね。自分のアイデアで始まっていなかったり、苦手分野と被っている場合もあるかもしれません。
周囲からは意気揚々とプロジェクトに着任したように見えますが、徐々にストレスを感じ始めて、脳の半分が「逃げ」の状態に陥りやすいんです。
行き詰まった時におこる不思議な脳のストレス反応とは?
会社はプロジェクトを任された社員の気持ちを深く理解しておく必要があります。
フルコミットしていないプロジェクトを抱えた状態の脳は、ワクワクしていると同時に疲労しています。脳が疲労していると、目の前の膨大なタスクに取り組みきれません。
プロジェクトを任された社員は、周りからは頑張っているように見られ、事も進んでいるように見られますが、ストレスを感じています。
そんな時、なぜか他の勉強を始めたりしたくなる。これは、脳が疲れている時の特徴で、勉強と称してちょっと分野違いの本を読み始めたりする傾向があります。
例えば、自分が本来取り組むべきプロジェクトに関する専門書ではなく、経営学やジャック・ウェルチの本など、今の仕事には直接関係ないけれど、一段階上のレイヤーの本を読んでしまったりする。
誰しも経験があると思うのですが、一つの物事に完全にピント合わせるのは意外と難しいことですよね。
外部パートナーの率直な意見が現状打破の突破口になる
色んな企業さんを見てきた僕の体感値ですと、Aさんのような期待の若手社員のうち、半数以上が中核テーマから逃げたくなっている状態です。
プロジェクトの停滞が半年、一年、二年、三年と長期化した時、重要なのは社内でメスを入れられるかどうか。けれど、社内では指摘できる人が少なく、問題が浮き彫りになりません。
だからこそ、外部パートナーである我々は、気づいたらできるだけ本人に対して率直に事態を述べるよう心がけています。深刻だと思ったら、できるだけ早くAさんの上司や経営陣に単刀直入に伝えます。
期待してアサインした社員の進捗遅れに気づいて、舵取りを修正するのは、難しい意思決定ですよね。しかし、さすがは経験豊富な経営者の方々。現状を伝えると、「この時点で実態を教えてもらってよかった。手の打ち方を考えるよ」と言ってもらえることが多いんです。
では、どのように手を打てばいいのか。
まず、Aさんに自身の問題を自覚してもらうこと。「周りからは優秀に見えているけれど、実際は目の前の課題に向き合えていない」事実を丁寧に伝えるんです。
時には、専門家の数を増やして、日々の細かい実務から逃げないように指導をする。そうすることで、Aさんのぼやっとしていたピントの焦点を合わせてあげるのです。
ここは頑張りどころですね。
スピード優先と質重視の狭間で苦しむAさんのジレンマ
もう一つ、Aさんが陥りがちな行動プロセスの例を挙げます。
例えば、時間に追われたプロジェクトが進行していて、新宿駅から東京駅に行くというタスクがあるとします。
新宿駅から東京駅に最速で着くために、まずは四谷駅に行き、それから中央線快速に乗りましょう、と会議で決定されます。
ところがAさんは、会議で決まったのに中央線に乗らないんです。
他の電車を見て、山手線に乗ったほうが一駅一駅しっかりと東京の景色を確認できるなと考えてしまう。別の有意義なことを見つけだして、時間軸を忘れて取り組みはじめるんですね。結果、倍の時間がかかって東京駅にたどり着くんですよ。
このAさんの行動、長期的にはメリットもあるんです。山手線の一駅一駅の景色をじっくり見ることで、東京をより深く理解することができますから。
でも、短期で見た場合にはこれほど迷惑なことはないんですよね。周囲の社員も最初は、「優秀なAさんのことだから、何か遅れた理由があるはず」と許そうとするでしょう。でも、何度も同じような事態を繰り返すうちに、すぐに軋轢につながります。
Aさん本人も、実はジレンマで悩んでいます。自分は山手線でじっくり時間をかける本質的なタイプだと思う一方、中央線で早く目的地にたどり着く意義もわかる。意識だけは中央線に乗っているのに、体は山手線に向いてしまうんです。
ミーティングでは「中央線に乗ってる最中です、もうちょっと待ってください」みたいなこと言っちゃうんでしょうね。でも山手線に乗ってしまっているから時間通りには着かない。
Aさんのような方々は、弁が立つため、ちょっと説明すると、みんなに妙に理解してもらえたりする。誠実で可愛い人柄で、キャラ的に憎めなかったりします。だから、事態のシリアスさに気づかず、悪化しやすいんですよ。
プロジェクト成功の鍵は、経営者だけが握るメスにあり
素晴らしい素質があるからこそ周囲からの期待を集めるAさん。Aさん特有の悩みやジレンマは、他の社員達にはなかなか理解できません。
Aさんを唯一分かってあげられるのは、経営層の方です。若い時から優秀で、様々な苦労を経て、会社を築いてこられた経営層の方だからこそ、Aさんの置かれた境遇に共感できるのです。
経営者の方がAさんに、
「俺も若い時、お前と同じような境遇に立ったことあんねんけど、今こうなってない?それは、脳がストレスを感じてる証拠やで」なんて話しをしてあげる。
もし当たっていたら、Aさんは図星の表情をするでしょう。
そうした会話が、Aさんと経営層の方とが真に分かりあうことにつながり、関係性が変わっていけばいいですよね。
何にせよ、問題に経営者がしっかりとメスを入れるということが、新規プロジェクトを成功させる上での大きなキーになりますね。
ここまでは、経営者視点でAさんとどう対面するかという話でした。
さらに踏み込むと、Aさんを取り巻く他のプロジェクトメンバーが、Aさんに対してどう接するべきか、Aさんを取り巻くチームとしてどういう進め方をしていくべきかを話し合うことも、Aさんを東京駅にまっすぐ向わせるためのキーになっていくと思います。
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