2019.10.23

高まる情報リテラシーの必然性。時代が求める消費者像とは?

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「期待して購入した商品が、いざ手にすると想像と違った。」こんな経験は誰でも1度はあるのではないでょうか。たくさんのモノと情報が溢れる現代社会において、消費者には広告が発信する「情報」を正しく判断する能力が必要です。YouTubeで拡散された香港デモや、Facebookの個人情報流出問題などからみる、デジタル社会の課題。「人と情報」が共存して社会を成熟させるために必要な「情報を自己コントロールするリテラシー」についてディスカッションしました。今回も、エンジニアの廣部さん / 西さんとともに、ディスカッションしました。

 

◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人

◇ ゲスト 廣部祐樹さん / 西潤史郎さん 

提供 : データ・サイエンティスト株式会社 
https://kwtool.co/company.html

  • 「運命の人」を見極めるのは、直感ではなく実態!?
  • 世界のトップブランドが頼りにする、日本人消費者のクレーム
  • Netflixで話題の「グレート・ハック」が警告する、作られた情報の危険性
  • Facebook・YouTubeが戦う、不正アカウントの実態
  • パーソナライズドされすぎた、全体が見えないネット情報
  • 「表現の自由」に確かなものにする情報リテラシー
  • 事実を表現するための勇気

 

「運命の人」を見極めるのは、直感ではなく実態!?

榊原:「あの人、私の運命の人かも」と思ったけれど、違った…。「この人いい!」と思って採用したけれど、そうでもなかった。人は、どこで直感と実態を間違えるのでしょう。みんなさん、興味深くないですか。

西:広告は、あえて直感と実態を間違えさせようとしているところがありますよね。

榊原:広告はむしろ、直感と実態の誤認ゾーンを狙って訴求してきます。どのようなものでも、いかに良く見せられるかに力を入れるのです。

メーカーサイドは誤認の幅を少しでも縮めようと努力しますが、広告代理店は、より誤認幅を大きくして、一人でも多くの人を惹きつけようとする。この幅は、マーケッターが頑張れば頑張るほど大きくなる傾向にあります。

そのため大衆の側は、この幅に気づく知恵が必要です。誤認幅を広げられても、実態を見抜く能力を高めなければいけない。それ故に、消費者教育はとても重要です。

 

世界のトップブランドが頼りにする、日本人消費者のクレーム

榊原:世界中のトップブランドが、日本のマーケットは勉強になると言っています。それは、日本人消費者が、世界で最も厳しい目を持っているからです。

例えば、トップブランドの中には、銀座や青山などで世界に先駆けて商品のテスト販売をすることがあります。それは、他の国ではクレームにならないようなことも、日本ではクレームになるからなんです。

許容範囲とみなされる縫製の小さなズレも、日本人は不良品だと認識する。他の国でこのレベルのクレームをするのは、富裕層のみです。

日本でテスト販売することには多くの利点があります。まず、富裕層でない消費者でも厳しい目を持っているため、数多くのサンプルを獲得できます。また、世界同時発売をしたために起こる、大量の不良品問題や、それによる評判の低下を心配する必要もありません。

最高品質の商品を作りたいなら、まず日本でテストするのが最も効率が良いそうです。

消費者が厳しいと、メーカー側も鍛えられます。メーカー側を鍛えようと思ったら、消費者教育が大切です。いかに誤認を減らし、直感と実態を関連づける能力を高めるかが、究極の消費者教育。国の政策として消費者のレベルを上げることも必要でしょう。

さらに、消費者の能力を高める教育は、初~高等教育までに始めるべきです。社会に出てすぐに、意味不明な宗教法人に取り込まれたり、まがい物を買わされないようにしてあげるのです。

 

 Netflixで話題の「グレート・ハック」が警告する、作られた情報の危険性

曽志崎:消費者の能力を高める教育を、国が指導するのは素晴らしいですね。なぜなら、選挙運動において、立候補者を良く見せるためにデジタルテクニックを使い、票を集める陣営がすでに存在するからです。

国は政策として「作られた情報で踊らされない選挙人」を増やし、被選挙人側をも鍛えるような教育プログラムを作るべきではないでしょうか。

今、Netflixで話題の「グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル」というドキュメンタリーがあります。トランプ氏が当選した大統領選やブレグジットの時などに、裏でどのようなデジタルテクノロジーが広告キャンペーンに使われていたのかを、あらわにするドキュメンタリー番組です。

大統領の選挙キャンペーンで、一体何が起きていたのか。現在のようなデジタル社会において、我々のプライバシーデータがどのように抜粋され、誰に利用されたのか。また、どのような手段で、人々が情報操作されていたのか…。

このような番組を見ることで、一般聴衆において、本当にいいものに対する感度が高くなっていくことを願います。

 

Facebook・YouTubeが闘う、不正アカウントの実態

榊原:今回の香港問題でのFacebookの対応は早かったですね。中国の本土系と思われる大量のアカウントが、香港市民を装い、香港警察を応援する情報を流していました。

Facebookは、すぐに疑いのあるアカウントを削除し、すぐにこのニュースを公表しました。メガメディアを運営している側でも、大衆を誤認させない努力が始まっているようです。

曽志崎:Facebookは、個人情報の流出などで社会的な批判を浴びている中での、今回の香港問題の公表。会社に対する信頼感を回復しようとする、真摯な姿勢には好感が持てました。

榊原:YouTubeのシステムでは、大衆扇動的ではない動画でも、内容に関わらず、多くのクレームがついた動画は一次的に非表示になってしまう。そのため、問題がないファクトに基づいた番組でも、反対派からの多量のクレーム投稿により、番組が引き摺り下ろされてしまう問題が多発しています。

当然YouTubeは、投稿者から反論があれば、内容を確認し問題がないと判断でき次第、アカウントを復活させる。この速度が、現在ではとても速くなったようです。メディア側の必死の努力が伝わってきます。

 

パーソナライズドされすぎた、全体が見えないネット情報

西:FacebookやYouTubeの事例でも分かる通り、人は物事の判断材料としてメディアやSNSの情報を見ています。もしその情報が間違っていたら、人々の判断も間違ってしまう。ネットやSNSであっても情報の信頼性が問われます。

廣部:私は、インターネットを利用する危険性について、ひとつ懸念していることがあります。それは、インターネットは能動的に情報を収集するシステムである、ということです。

人は、能動的に自分が欲しい情報しか入れないという傾向があります。情報に接する時、裏にあることを見極めないと、自分が見たい一側面の情報しか得ることができない可能性があります。

榊原:しかも、昨今のネット情報はパーソナライズドが効きすぎて、気がついたら自分の欲しい情報しか表示されなくなってしまっています。

廣部:難しいのは何をフェイクとして、何をフェイクとしないかということです。真実だけど、一側面しか描写していない場合は多々あり、どの一面に見るかによって、感じ方が変わってしまう。

現在、大多数のメディアは、一側面のみ描写を切り取ってしまうことが多く、だからこそ閲覧者側のリテラシーの高さが必要なんです。

西:思考の偏りをいかに正すかが重要ですね。

 

「表現の自由」を確かなものにするデータリテラシー

曽志崎:私は思考の偏りを正すための手段としても、表現の自由が大切なのだと考えます。

例えば、数人がひとつの情報について話し合っていたとします。この人たちは、全く違う価値観で、同じテーマについて話している。このとき大切なのは、どの価値観の情報にでも、すべての人がアクセスできる社会であることです。

最近、愛知の国際芸術祭で、ある展示が中止に追い込まれたというニュースがありました。展示内容については、さまざまな議論があると思います。しかし、会場運営者や来場者に、危機がおよばないことを担保しながらも、展示ができる環境を用意する。これは表現の自由を保証するための、社会的に必要なインフラではないでしょうか。

先ほどの、YouTubeの動画がクレームによって一時非表示にされ、内容の安全性を確認したのち再表示される事象も、表現自由のひとつです。

表現の自由を保証するために、クレームのあったデーターをどう確認するのか。より表現の自由を担保される社会のもとでの、データリテラシーが試されています。

 

あいちトリエンナーレ2019にみる、事実を表現する勇気

榊原:「事実かどうか」と「表現の自由」は絡み合っていて、実は一体なのでしょう。事実だということを表現するのは、テーマによっては勇気がいります。

今回の愛知の国際芸術祭での問題も、展示が取りやめになた背景の力学は、一体どのようなものだったのでしょう。本当になんらかの圧がかかったのか。それとも、主催者側の続行する勇気の問題だったのかは、最後までわからないでしょう。

これはメディアの世界でも同じです。勇気を持って事実を主張し続けずに、早々に周りの声に負けて、主張を放棄してしまう人も多いのです。

真実はわかりかねますが、最近韓国で、本来それを事実だと信じている人の勇気を削ぐような暴行事件がありました。表現の自由さえもままならなくなっていく、主張自体が壊され、主張できなくなるということは、本当に危険な状態です。

曽志崎:表現の自由の抑圧が、戦争の引き金になっていたり、戦争に至る時代背景を作ってしまったり…。我々は、このようなことを過去に何度も繰り返してきているはずです。

人類は、文化を積み重ねて学んだことを、次の社会に生かせる唯一の生命体です。技術の発展とともに、良い社会が形成されていくことを切に願います。

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この番組のパーソナリティ

榊原直也

榊原直也

データ・サイエンティスト株式会社 代表取締役社長

Webメディアと検索順位との関係を数学的に解き明かす技術で複数の特許を持つ。その技術を駆使したサイト診断サービスは、その効果が口コミで広がり、いまや著名企業が何ヶ月も待つほどの人気サービスに。プライベートでは、難しい分野でもわかりやすく楽しい雑談ネタにしてしまう「バラトーク」が、学生、主婦、ビジネスマン、経営者など幅広い層に大人気。モットーは「楽しく!わかりやすく!」。

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