世の中の興味深いマーケティング事例や大きな数字、意外な事実など、経営者 榊原直也 のアンテナに留まったビジネス話題をご紹介する『ばらさんのBusiness Talk | バラトーク』。
今回のテーマは、物事の「イメージ」の不確かさと、実態を掴むために必要なデータの読み解き方についてです。的確に実態を見極めるためには、どうしたら良いのでしょうか。
今回は、石川さんと共に話を進めてまいります。
◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人
提供 : データ・サイエンティスト株式会社
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- ブルーライトは本当に目に悪いのか
- 素晴らしい国・日本の、不名誉なNo. 1の称号
- 農薬を最も使っている国は、アメリカではなく日本
- 具体的な数字データを安直に受け止めないで
- 電気刺激で記憶力が劇的に回復する?!
- アーモンドや20世紀梨も「遺伝子組み換え植物」だった
- 「アフリカ系アメリカ人の体型が良い」理由は、悲しい歴史の中にあった
ブルーライトは本当に目に悪いのか
榊原:みなさん、ブルーライトって気になりませんか。
ブルーライトは目に悪いと思うから、高くてもブルーライトカットのフィルムを買いますよね。ところが、快晴の日に「心地いいなー」と見上げる空の青も、実はブルーライトなんです。
石川:ブルーライトが体にどのような影響があるのか、きちんと考えないと正確な判断はできないですね。
榊原:その通り。個別で見たときには悪く見えても、実際は悪くない事だってある。だから実態の見極めは大事だと思います。実態を見極めるために、今日は様々な例をあげてみましょう。
素晴らしい国・日本の、不名誉なNo. 1の称号
榊原:最初は日本の実態についてです。
こんなに素晴らしい日本にも、多くの不名誉なNo. 1やNo. 2があることをご存知ですか。
石川:例えば、長時間労働などですか?
榊原:かつてはそうでした。しかし現在、祝日数は世界一クラス。取得可能な有給休暇数も、権利ベースでは世界最高水準です。問題は、有給休暇を消化する人が少ないこと。日本人はまだ長時間労働だと言われてます。
ところが最近、政府が働き方改革を法案化しました。今までの日本人の傾向見ると、一度「こうやって行くぞ」という流れができたら、どの国の人よりも真剣に任務を遂行します。そして世界一になってしまう…。長時間労働が解消される日も近いかもしれません。
こんな例もあります。
ITバブルの時、日本のブロードバンド価格は高かった。しかし、孫正義さんの尽力もあって、あっという間に当時のG7の国の中で一番安くなりました。
石川:余談ですが、5Gも同じ流れになりますか?
榊原:5Gは、国内の光ファイバーの幹線から契約者の住宅をつなぐ、ラストワンマイルの情報処理速度が早くなるだけ。実際の国際間通信には、やはりデータは海底ケーブルを通らなくてはならず、通信速度は現在と変りません。しかし最近、MicrosoftやGoogleが海底ケーブルではなく、宇宙を使うと発表していますので、そちらに期待したいですね。
農薬を最も使っている国は、アメリカではなく日本
榊原:日本は単位面責あたりの農薬使用量も世界一です。アメリカの6~7倍というデータもあります。
石川:ちょっと待ってください。飛行機で大量の農薬散布をしている、アメリカの映像を見たことがあります。イメージとデータの実態が全然違いすぎませんか。
榊原:確かにアメリカの大規模農業では、大量の農薬を散布しているイメージがある。しかし、単位面積・一平方メートル辺りで、どれだけ農薬使用してるかを計算すると、日本の農薬使用量が世界一になります。
数字って難しいですね。これはあくまでも数字の表す一面であって、大事なのは実態です。一歩踏み込んで、実態に目を向けてみましょう。
まずは、日本と国土の広い国の農業の現状です。
日本はアメリカなどに比べて国土が狭いため、狭い土地を最大限に活用しようと、一つの土地で年になんども収穫します。
一方、国土の広い国では土地は余っているため、一つの土地をなんども使用する必要はありません。別の作物を作りたいなら、隣の畑に作ればいいんです。
農地をどう活用し、どれだけの作物を、どういう密度で作るか。土地の活用実態に目を向けると、見えてくるものがあります。
1年のうち、1つの土地を2回使う国と、一度しか使わない国。単純に考えても、日本の一平方メートルあたりの農薬使用量が多くなることがわかります。
具体的な数字データを安直に受け止めないで
榊原:こんなデータがあります。
日本は、寝たきり老人の数が世界一です。精神病院の数や、ペットの殺処分の数も世界トップクラス。さらに、若者の自殺率や、食物排気量も世界一。
この事実だけを聞いたら「日本ってなんて怖い国なんだろう」と思いますよね。しかし、一つ一つのデータをよく精査すると、実態が見えてきます。
例えば、日本の死亡原因のNo. 1が自殺だというデータについて。みなさんは、殺人が死亡原因No. 1の国に住みたいですか。
日本は安全な国なので、必然的に危険な国の死亡原因トップのいくつかの項目は、順位が下がる。そのため、自殺が死亡原因のトップになってしまうというのが、日本の死亡原因問題の実態です。
また、日本は生活習慣が原因でかかる病気が、死亡原因のトップ3だそうです。
しかし、日本は長寿国ですから、長生きに伴う疾患の死亡率が増えて得たり前。生活習慣病問題の実態は、長寿であることを喜ぶのか、長寿であるがためにかかる病気の件数が高まることを憂うべきか、ということです。
一つのデータの表だけを見て、データの語る事実に恐れ悩むより、データは表裏一体であることを念頭において、データが示す問題に対処して行って欲しいですね。
石川:一つのデータの一面だけを見て一喜一憂するのではなく、別の視点から同じデータを見て、しっかりと実態を捉えることは重要ですね。
榊原:そうです。データは具体的であるため、周りに与える影響が大きい。しかし、データはある側面、ある部分のデータであることが多いのです。
実際には、物の形は様々です。子供の時に作った粘土細工には、尖った部分も丸い部分もありました。全体を見て一つの作品なので、尻尾のところだけ見て「尖っている」と怒られても困りますよね。
電気刺激で記憶力が劇的に回復する?!
榊原:先日、とても驚いたニュースありました。加齢による記憶力低下を、電気刺激で20代並みに回復させたという研究を、ボストン大学が発表しました。60~70代の被験者に頭皮を通じて電気的刺激を与えたところ、20代の被験者と同じレベルに記憶力が回復したそうです。高齢化社会の日本でも近い将来、普及するかもしれません。若い人もやりたくなりませんか。
石川:僕は31歳ですけど、やりたいです。
榊原:今回のボストン大学の研究は、作業記憶を司る部分に限定しています。電気刺激による作用で脳が同期する事で、記憶力が劇的に改善するそうです。
例えば、何を買うべきかを記憶していたり、与えられたいくつもの作業をちゃんと記憶していられるかなどの短期記憶が、電気刺激で劇的に改善するんです。
石川:改善したいですね。複数の仕事を並行して進めていると、考えていることがコロコロと変わるため、忘れやすくなりますから。
榊原:わかります。私もたくさんのナイスアイデアを忘れてきました。脳の中のどっかに残ってるといいんですが…。
アーモンドや20世紀梨も「遺伝子組み換え食品」だった
榊原:さらに、こんなデータがあります。日本は、遺伝子組み換え植物が世界一です。
よく「これは遺伝子組み換え食品ではありません」と、書かれている商品を目にします。遺伝子組み換えは悪いものというイメージですが、生物学者の中には、遺伝子組み換え食品は体に悪くないという方もいるようです。
遺伝子組み換えの多くは、交配や突然変異などの品種改良技術によって、産み出されてきました。そして品種改良を積み重ねることで、遺伝子は原種に比べて徐々に変化していきます。
例えば、アーモンドの原種の表皮には、青酸カリが含まれていて食べられませんでした。
ところがある時、突然変異で食べても死なないアーモンドの木が発見された。その後、新種の木を広く栽培するようになったんです。
20世紀梨も、突然変異によってできました。20世紀梨の原種は、ごみ置き場に生えていた長十郎種の梨です。ある日ごみ置き場で、美しく、たわわに実った梨の木があることに気づき、育ててみたら、緑鮮やかでみずみずしい梨ができた。
20世紀梨もアーモンドも、自然な過程を経て、原種とは違った遺伝子になっています。
石川:そうなると、遺伝子組み換えも全否定できませんね。
「アフリカ系アメリカ人の体型が良い」理由は、悲しい歴史の中にあった
榊原:我々人間も様々な経緯を経て、遺伝子が変化してきました。こんな事例があります。
アフリカとアメリカの黒人の方は同じルーツであるのに、体格が全然違います。アフリカの方々は細身の体型が多いのに対して、アメリカの方々は骨太でとても体格の良い方が多い。
答えは奴隷貿易の時代にあります。
当時欧米の国では、アフリカの人々を船に大勢押し込めて、自国に奴隷として連れてきていました。できるだけ船内での死亡率や罹患率を下げたかった奴隷商人たちは、体格の良い人を選んで奴隷にした。そして、体格の良い男女を無理やり結婚させ、強い子を生ませ、この子供も奴隷としました。そのため、奴隷貿易をしていた国にいる黒人の方は、体格の良い人が多いのです。
歴史的経緯で、人の体格も変化するんです。
石川:植物と人間を同列に並べると語弊があるかもしれませんが、事の経緯は似ています。
榊原:様々な経緯があるということです。
食品の遺伝子組換えの是非を論じるよりも、一歩踏み込んで、実態では何が起きているのかを深掘りしていくと、新しい発見があるかもしれません。
石川:物事は多面的に見なければいけませんね。
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