色々な事例や大きな数字、意外な事実など、経営者 榊原直也 のアンテナに留まったものは何でもご紹介する『ばらさんのBusiness Talk | バラトーク』。あなたの密かな情報源として、ぜひお役立てください。
今回のテーマは、コミュニケーション不足によってすれ違う事業会社。想像以上に陥りやすい思考停止欲求の罠ついて迫ります。
◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人
提供 : データ・サイエンティスト株式会社
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- 詰めの甘さで露呈する、発注側と受注側の意外なすれ違い
- 「よしなに」という認識が落とすボールの数を増やす
- お互いを甘えさせる「思考停止欲求」
- 窓口担当の高いコミュニケーションスキルが紛争を防ぐ
- 思考停止欲求に打ち勝つ方法
詰めの甘さで露呈する、発注側と受注側のすれ違い
榊原:発注側と受注側の双方において、細部に関心があるかという点は、仕事がスムーズに進むか否かを大きく左右する話だと思うのです。
たとえば、認識の微妙な違いについて、質問を投げかけてこられたり、テーマをはっきりさせるお客様がいる。一方では、そういうことに関心を持たない、大まかでざっくりとした話や、SEOの裏話などに興味関心が強いお客様がいるとします。
コンサルタントの立場から見たとき、前者と後者のお客様への接し方、特に後者の「細部に関心のないお客様」には、どういうところに注意して進めていけばよいのでしょうか。
曽志崎:お客様のこの先1週間の予定では、タスクの順番を含めた計画がどのようになっているのか、お客様がどこまで関心を持っているのかを、反応を見ながら判断する必要があると思います。
計画がうまくいくイメージをしっかりと持っていらっしゃるお客様でも、ひとつひとつの細かいタスクレベルまで落とし込めていない可能性もあるからです。
こういったリスクがあることを意識して、会議に挑まなければならないですね。
榊原:たとえば、理想的なサイト構造図があったとします。しかし、実際にサイトを制作すると、発注側の理想が反映されていないという事態が起こりやすいですよね。
「よしなに」という認識が落とすボールの数を増やす
榊原:そもそも仕事の発注時に、「細部については専門家の皆さんが良いようにやってください」という思考停止欲求があると、もう「よしなにやってくれるんですよね」という認識になります。
この認識が、事業会社がしばしば陥る思考停止です。要求仕様の甘さは「よしなにやってくれるだろう」という認識になるのですが、制作会社側はそこまで作れないのです。
発注側と受注側の認識の「隙間に落ちてしまうボール」の数は非常に多いわけですね。
思考停止欲求が存在することをよくわかっている熟練の制作会社であれば、歩み寄ることで、あらかじめボールが落ちてくる場所で構えることができるのですが、それはかなり優秀なプレーヤーだといえます。
走れるし、ボールをキャッチできる、また元のポジションに戻って通常プレーをする、いざとなったらまた走ってくるという、熟練のプレーヤーです。
発注側も、たくさんのプロジェクトで外部パートナーとのやり取りに慣れている方は、隙間に落ちるボールの数が多いことを予期しています。できる限りのボールを拾おうとするし、声も掛け合うといった具合に、こちらもかなり優秀な方ですよね。
しかし、ほとんどのプロジェクトではそこそこ優秀な方々がアサインされて、両者歩み寄りはするのですが、届かないボールが沢山出てくるのです。
お互いを甘えさせる「思考停止欲求」
榊原:外部パートナーとの仕事が決定した時、隙間に落ちるボールの存在について、事前に十分な申し合わせをしておいた方が良いということですね。発注側と受注側の双方が、申し合わせの中で「思考停止欲求がある」事実を、お互いに確認しておいた方が良いのです。
発注側は受注側に対して「制作のプロなんですから、全部やってくれるんですよね」という思いがあります。
たとえば、本来は発注側がやるべき検索キーワードの選定とか優先順位付け、あとはページ1枚1枚のタイトルテーマやターゲットキーワード、そして目次。目次の中に記述される内容などですね。
これらは本業をやっている人が一番詳しいわけですから、本来は彼らが作るのが一番合理的なんです。
しかし、発注側としては「目次とかも、うまいこと作ってくれるんですよね」という認識です。もちろん受注側も「頑張ります」「できます」とは言いますけど、内心は「自分たちの仕事ではない」という認識がある。
実は、ここに大きな落とし穴があるんです。プロジェクト全体にはもちろん、タスクの細部にも重要な意思決定がたくさんあるからです。
それでも発注側は、細部に関する重要な意思決定すら「よしなにやってください」と思っていますから、イラっとしてしまうのです。
受注側からすれば、たとえば目次の3つ目と4つ目のどっちを先に語るべきかなど、本業に詳しい人じゃないと判断できないという認識なのです。
窓口担当の高いコミュニケーションスキルが紛争を防ぐ
榊原:発注側に、詳細まできっちり意識して物事を進めるタイプの人がいれば良いのですが、コミュニケーションが苦手なタイプの人が窓口になると紛争の元になります。
発注側と外部協力者との間に立つ窓口担当は、特に柔軟なクッション役でなければならないポジションです。窓口は、高いコミュニケーションスキルを持つ人でなくてはならない。
つまり、発注側の経営者サイドが、コミュニケーションスキルを育成しなければならない事実を、強く意識しておかなければならないのです。
発注側と受注側の紛争を未然に防止するためには、窓口担当の「話し方術」であったり「和解術」であったり、全体を含めたコミュニケーションに関する深い知見を育成しなければならない。
たとえば、コミュニケーションスキルを磨くためのしっかりとしたセミナーに参加するなど専門的なトレーニングでスキルを身につけてもらった方が良いと思います。
思考停止欲求に打ち勝つ方法
榊原:発注側と受注側の「認識の隙間」には、実に沢山の小さなボールが落ちてくるのです。それは、思考停止欲求によるすれ違いが多いことに起因します。
曽志崎:思考停止欲求があるか否かを自ら思考しようと思っておられるのか、また、細かく要件を固めようという意思を持っておられるのかは、質問ひとつにも現れていたのかもしれません。
先日お会いした方で、自ら仕様をきっちり決めようという姿勢を感じた回がありました。
もしもその時、思考停止欲求が見えたとしたら、お客様が詳細に関心を持てるように、コミュニケーションで誘導してあげることが必要になったのだろうと思います。
榊原:思考停止欲求があるということ、そして相手に対する期待が、本来相手ができる範囲に比べて大きくなりすぎている場合がありますので、このギャップをお互いに認識する必要があります。
思考停止欲求に打ち勝つためには、「思考停止欲求がお互いにあるという事実」について、事前にディスカッションの場を設けておくことが重要だということですね。
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