世の中の興味深いマーケティング事例や大きな数字、意外な事実など、経営者 榊原直也 のアンテナに留まったビジネス話題をご紹介する『ばらさんのBusiness Talk | バラトーク』。
今回取り上げたいのは、シリコンバレー化が進んでいるドイツの都市、ベルリンについてです。様々な歴史的背景から今のベルリンは、各国から若者が集まってスタートアップ企業を始められる、第二のシリコンバレーのような雰囲気を最近帯びています。
このベルリンの事例から、これから日本は国際的にどのような年になっていくのか、またどのような都市に人は集まっていくのか、今回からゲストとしてお招きしている大前さんと石川さんを交え、分析しています。
◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人
◇ ゲスト 大前和徳さん / 石川祥一郎さん
提供 : データ・サイエンティスト株式会社
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- クラウドファンディングが生き残った理由
- 「越境者」が必要な時代
- 今、ベルリンが熱い。
- なぜベルリンはシリコンバレーになれたのか?
- この先、人が集まる場所。
クラウドファンディングが生き残った理由
大前:ここ最近でクラウドファンディングが成長の兆しを見せています。十年前はソーシャルレンディングとも呼ばれていました。当時は、ソーシャルゲームなど新しいビジネスが流行りはじめた頃でもあります。
単なる流行りのビジネスと社会課題を捉えたビジネスは違います。ソーシャルゲームは前者で、クラウドファンディングは後者に当たります。クラウドファンディングはプレイヤーやユーザーが変わりながらも、社会にニーズがあるため今日まで続いてきました。
今年か来年あたりには、本格的に上場や大手へのバイアウトをするクラウドファンディング企業が出てきそうです。
「越境者」が必要な時代
大前:クラウドファンディングのような新しい技術を流行させるためには、いわゆる「越境者」がより必要となってきます。
例えば、インターネットのような新しい技術も、当時の技術者とビジネスサイドの人投資家が巡り会うことで、現在のように世界で広く使われるようになりました。
ブロックチェーンでも同じで、技術とビジネスを足し合わせる人の存在が大事になってくる気がしているんですよね。
榊原:本当に同感です。投資銀行やベンチャーキャピタルも、投資対象の技術を見抜くためには、その事業の知識が相当必要ですよね。技術のことも分かっていないといけない。投資の知識だけでは特許の真偽も見抜けません。
大前:そうなんです。最近よくスタートアップ業界の人に『シリコンバレー』というアメリカのドラマを勧めているんですよ。その中に特許侵害を訴えつつ和解に持ち込んで稼ぐ悪い人が出てくる。ドラマなので大げさですが、向こうは知財がお金を生み出す前提があるからこそ生まれているストーリーです。
榊原:無形資産の価値を置き直す風土があるんでしょうね。日本もそうなりつつありますね。
今、ベルリンが熱い。
榊原:今、大前さんが注目しているスタートアップに熱いエリアはありますか?シリコンバレー、深圳、渋谷など、色々ありますが。
大前:ベルリンですね。昨年実際に行ってみて、90年代のシリコンバレーのような雰囲気を感じたんです。100年後なのか、パラレルワールドなのかわかりませんが、日本とはとことん違う印象を受けました。
街を歩くと、壁は落書きだらけ。日本だと真っ先に職務質問を受けるようなモヒカンに刺青の人達が町中に溢れているんです。
榊原:そこがベンチャーのメッカになるんですか?
大前:家賃が非常に安く、外国人用のビザが下りやすい、などの理由で英語圏の人が多く移住しているんです。クラブカルチャーも盛んで、ビーガンやLGBTなどの先進的な考え方の人にも理解がある。シリコンバレーのフリーダムな文化によく似ています。
ベルリンに自由を求める人が集まり、安いアパートでスタートアップを立ち上げる流れが生まれています。昔は治安が悪かったエリアが、今は最高にクールなITベンチャーが集まるエリアになっている。面白いですよね。
今や、ベルリンは通称名『クリプトキャピタル』と呼ばれているらしいです。
榊原:『クリプトキャピタル』とは?
大前:いわゆる仮想都市です。東ヨーロッパから優秀なエンジニアが、西側から英語が話せて資金調達力のあるビジネスサイドの人が流れ込み、ミックスしている。
曽志﨑:僕の知人にも欧米からベルリンに移住したカップルがいます。最近のベルリンのスタートアップでは働く環境も整っていて、例えば社員の健康のために朝食を用意するのは当たり前になりつつあるのだとか。まさにベルリンに人が集まる理由につながるのかな、と。
大前:ベルリンは環境への意識も高いですよね。ペットボトルがなく、飲み物には紙ストロー、スーパーではエコバックを使うのが常識です。循環型の社会を地でいく感じです。果たして日本はそこまで到達できるのか、ちょっと疑問ですね。
なぜベルリンはシリコンバレーになれたのか?
榊原:どうしてベルリンは、他の地域と比べて先進性のある地域になれたのでしょうか。
大前:それは、ベルリンが持っている特殊な歴史的背景が関係しているようです。
現地の人によると、ベルリンは、第三帝国以前は人口400万人を超えるヨーロッパ最大の都市だったのが、厳しい市街戦で街が破壊されたそうです。その後、ベルリンの壁ができて思想が東西に分断され、壁が破壊された後は再び混ざり当たった。
次々に価値観が入れ替わった歴史があるからこそ、国を人任せにしない意識が市民に生まれ、常にゼロベースで新しいことを生み出す風土が出来上がりました。
今、スタートアップへの投資額では、ベルリンがロンドンを抜いて第1位。ベルリン系スタートアップは非常に勢いが出てきています。
榊原:日本でいうと、五反田ですね。最近、五反田も風景が変わってきていますよね。
石川:アメリカも、過去の蓄積がないところからシリコンバレーなどを生み出したという点で共通していますね。
大前:そうですね。シリコンバレーの魅力が減ったと言われる原因は、地価の過剰な高騰です。今やシリコンバレーは不動産価格が高すぎて、ガレージベンチャーの起業が不可能に近い。一方、ベルリンは、海外から働きやすさを求めて多くの人が集まってくる都市となりました。
この先、人が集まる場所。
榊原:グーグル社員の間でも、シリコンバレーよりも東京の方が人気あるという話を聞いたことがあります。それは、安く良い家に住めて、楽しいからだと。
大前:本当にそうだと思いますよ。これからの時代、人は仕事ではなくライフスタイルで住む場所を決めるようになると思います。美味しいものがある場所、楽しいエンタメがある場所にまず人が集まって、そこから仕事を探す。
榊原:インターネットがあれば、遠くても仕事できますしね。リモートワークは今後もどんどん普及しそうです。
大前:どこに住むのが魅力的か、という点で見ると、日本の競争力はあります。食やアニメなどのコンテンツなど、人を惹きつけるエンタメの力があるからです。
曽志﨑:場所にとらわれない働き方が進むのは良いですよね。この間ロサンゼルスに行った時、配車サービスのLyftを使ったのですが、その時の運転手の方がまさにそんな働き方をしていました。テキサスで美容師をしつつも、ロサンゼルスに移住してきたばかりだと仕事がないから、一時的にLyftで運転手をしていると。
大前:そうしたプラットフォームを提供しているLyftやUberはすごいですよね。東京でも、UberEatsでたくさんの外国人の方が働いているのを見かけます。
仕事ありきではなく、家族やライフスタイルを優先しながら働くことができる社会の流れは、今後も加速するでしょうね。
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