世の中の興味深いマーケティング事例や大きな数字、意外な事実など、経営者 榊原直也 のアンテナに留まったビジネス話題をご紹介する『ばらさんのBusiness Talk | バラトーク』。
今回取り上げたいのは、「歴史は類型化しうるか?」というやや大きめのお題についてです。ビジネスだけではなく歴史にも精通する大前さんに、自称歴史素人の榊原さんがこの論題を投げかけます。歴史の話から、現在の政治や企業との共通点などにも触れていきます。
今回のゲストにも前回に引き続き、大前さん、石川さんをお呼びしました。
◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人
◇ ゲスト 大前和徳さん
提供 : データ・サイエンティスト株式会社
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- 全ての歴史はローマに通ず?
- 良い政治家の条件
- 現在の感覚で過去を評価できない。
全ての歴史はローマに通ず?
大前:全ての歴史ってローマに時代に繋がってると思うんですよね。例えば、議会民主の議事録は、この時代にまで残っています。共和制の時代のローマは今の民主国家と全く変わらないんですよ。元老院で議論されたことがその日のうちに広場に張り出されて、そこにカエサルの女事情が語れてたり。それを見ると、人間の本質ってあんま変わってないんだって思いますよね。だから歴史を学んで活かさないとって思います。
榊原:僕は歴史素人なのですが、歴史はパターンが多すぎてわかんないんですよ。誰か類型化してくれませんかね、人類史における重要なパターンを5つくらいに。ローマの議事録を紐解いて、歴史を類型化できないんですか?
大前:この前原宿でエコノミストの方たちと食事する機会があったんですよ。彼らは、毎月あらゆる経済予想をしています。いろんなデータをトラッキングして、分析してるんです。
そこで僕は、どういう時に予想が外れるんですかっていう質問をしました。
そしたら、彼らは最大の不確定要素は政治だと言うんです。例えば、トランプが変なことしました、とかどこかで何かが勃発したために緊急的な措置をしました、などが予想できないと言っていましたね。
だから類型化はできるんですけど、不確定な要素は常に出てくるので、潰しきれないと思います。不確定なものがなかったら、ハードなビジネススクールを出た人は百発百中で大儲けできますよ。なかなか再現できないのが社会なんでしょうね。
良い政治家の条件
榊原:もう一個気になってるのが、政治家は心理学っていうのは活用されてるんですかね?こういうこと言ったらこう思われるみたいな。
人間関係において、まずい話がどこからか漏れて間接的に相手に伝わることで、相手を怒らせてしまうことはよくあると思います。そのように人間関係でしてはまずいことを、国同士では普通にやってる気がするんですよね。
大前:僕は、政治家の世界では、その人の評価って、その瞬間にはわからないと思うんですよね。短期的にいいことが長期的にいいとは限らないですし、やはりここにも不確実性が絡んでくると思います。
例えば、この前ゲイリー・オールドマンのウィンストン・チャーチルの映画を見たんです。当時はドイツが他のヨーロッパの国々を侵略していて、あのフランスでさえも陥落寸前の時に、ヒトラーと戦うって言えたことはすごいと思いました。
石川:当時はドイツの暗号を解読できていませんでしたからね。
大前:その時にムッソリーニが、今なら講和してくれるって言ってきて。ドイツと戦うなんて普通言えませんよね。そんな中で、フランスが落ちそうだという連絡が入ってきたりして、なかなか難しい判断だったと思います。
会社の経営でも、簡単な判断ってなかなかできないと思います。私も会社を経営の経験があるので分かるのですが、いろんな選択肢を前に悩んでいるとき、経営者は孤独な判断を迫られるんですよね。自分がチャーチルの立場だったら、簡単なことって言えないなって思いますし、チャーチルのような判断は下せないと思います。
曽志崎:そうなると米朝首脳会談の後の首脳陣の発言っていうのも、綿密に計算されているかもしれませんよね。
榊原:中国に対する牽制とか、選挙への配慮とか。
大前:あと、僕はこの映画を見たときにゲーム理論の話だと思いました。チャーチルが弱気な姿勢を見せたらヒトラーがどう出てくるのか、ヒトラーはイギリスを本当に恐れているのか、分からないんですよね。
自分ではベストの判断だとしても、相手との力関係がのことなので、本当にベストとは限りません。映画を見た時、困難な状況でも一人で決断しないといけないリーダーほど孤独なことはないな、と思いました。後からではわからない、当時のギリギリの立場を感じさせられる、いい映画だったと思います。
時代の空気が歴史を作る。
榊原:会社でも、去年のあの時期になんでこんなこと決めたんだっていう会議ってあるじゃないですか。その時の雰囲気じゃないとわからない決断ってあると思うんですよね。歴史の判断もそうだと思います。今の我々の感覚で歴史を評価するっていうのは難しいと思います。当時の国民の危機感だったり、焦ってる気持ちだったり。
大前: おっしゃる通りです。土曜日の日経新聞のコラムに、東大の歴史学の本郷さんという 方が連載を出していて、とても面白いんです。例えば、『廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)』というお寺がすごい壊される仏教破壊運動が明治維新後にありました。
歴史の教科書の中では、明治時代になって天皇の時代だから神道を大事するために政府が後押ししたって書いてあるんですけど、実際はこれ政府は何にもしてないんですよ。つまり、空気を読んだ一般庶民が自発的にやったっていうことになります。
榊原:「空気」とは何かって話ですよね?
大前:多分これから天皇の時代だから「仏よりも神でしょう」っていうものだったかもしれませんよね。その時、現代でいう国宝みたいなものを6割ぐらい壊したらしいんですよね。
榊原:今の時代じゃ全く考えられないことですけど、その時の空気ではみんなそうしたほうがいいと思ってそうしてるわけですもんね。
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