世の中の興味深いマーケティング事例や大きな数字、意外な事実など、経営者 榊原直也 のアンテナに留まったビジネス話題をご紹介する『ばらさんのBusiness Talk | バラトーク』。
今回取り上げたいのは、前回から発展して、類型化した歴史を乱す要素についてです。昔と今とで全く違う世間の「空気」の話から、どのように未来を考えていけば良いのか前回に引き続き、大前さん、石川さんをゲストにお呼びしてお話しします。
◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人
◇ ゲスト 大前和徳さん / 石川祥一郎さん
提供 : データ・サイエンティスト株式会社
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- SNSの登場で多様化する時代の「空気」
- 国が「真実」を秘密にするメリットとデメリット
- ローマ、黄金の時代の理由は情報判断の正確さにあり
- 今か未来か、生き残るために経営者がすべき「選択」
SNSの登場で多様化する時代の「空気」
榊原:今のようにテクノロジーでいろんな空気に触れられる時代はどうなっていくんでしょうか?今は世の中全体の空気を感じつつ、SNSなどで個別の空気を感じられますよね。大前さんも曽志崎さんも石川さんも、それぞれのお仲間の空気をFacebookで把握していらっしゃる。様々な波長が合体することで、ボラティリティという面では下がってるんじゃないかと思っているんですが、どうでしょうか?
大前:近年、トランプ大統領の当選やブリグジットが僅差で決まりましたけど、僕の知り合いの会社ではAIを使ってソーシャルメディアの空気を読んでそれを当てたんですよ。
結局、SNSや新聞の空気が投票結果を作ってるんじゃないかと思っています。トランプ当選やブリグジットがいい判断なのか悪いのかまだわかりません。ただ、賢い人間というか、少数の人間が判断したらまた違った結果になったと思います。「空気」というものが良いのか悪いのかは慎重にならないといけないですよね。
国が「真実」を秘密にするメリットとデメリット
榊原:私は三権分立もいいんですけど、四権、五権分立くらいにすべき思うんですよね。四権目はマスメディアで、五権目は独立機関。政治家や司法やマスコミが言ってることとファクトを照らし合わせる第三者機関があってもいいと思うんですよね。ファクトさえも歪められる可能性がありますが…。
結局どこ信じたらわからないとき、とりあえずあそこ見れば真実はわかる、みたいな仕組みが必要ですよね。
そうしたら、安倍首相が言ってていることが正しいのか、案件ごとにわかるんでしょうね。
大前:そのさじ加減にはインテリジェンスが必要な気がしていて、教えちゃいけないファクトもありますよね。例えば、なぜ原発がメルトダウンしたのか。北朝鮮のミサイルの性能。ケネディの暗殺の犯人も伏せられてますよね。
榊原:それに関しては、権利を定めるしかないですよ。つまり、何人たりとも、事実に迫る自由はおびやかされない保証をする。表現の自由も大事ですけど、事実を知る権利も大切ですよね。それが大人の事情によって伏せられたとき、後で知らされるんでしょうね。
大前:榊原さんみたいに事実をもってきちんと判断できる人は知りたいと思うかもしれませんが、事実をもとに判断できない人は混乱してしまう懸念もありますよね。
榊原:事実に直面した時に「知りたくなかった」と嫌悪感を抱くかもしれませんよね。みんなで仲良くするには秘密にしたほうがいいことがあるじゃないですか。歴史はそんなことで溢れています。
大前:市民がエンパワーされる、その人たちがいろんな意思決定ができる、そういう社会がいいと思います。一部の賢い人間が決める社会も良くないと思う。
榊原:知らない方が幸せなことってありますよね。地球上ではニュートンの式を使うのに、宇宙から帰ってくるにはアインシュタインの式を使わないといけないですよね。アインシュタインの式の方が事実に近いんですけど、なんせ難しい。有用性の問題でもありますよね。
曽志崎:機関の有無問わず、ファクトと照らし合わせて意思決定することの重要性はありますね。統計の不正問題とか、ちゃんとデータ取れていないこともあるようですが。
榊原:本来は学者とか大学がファクトを調べて教えてくれるんですけど、難しいし、みんなが関心があることについてピンポイントで教えてくれませんもんね。ローマの話に戻ると、その時に議論されていた話は、ファクトに基づいていたんでしょうね。
ローマ黄金の時代の理由は、情報判断の正確さにあり
大前:現代では情報を早く仕入れることが大事みたいになってるじゃないですか。塩野七生さんの講演会に行ったんですけど、塩野さん曰く、ローマの人たちは辺境のエジプトとかで起こった暴動などの情報が30日かかってローマにやってくるらしいです。塩野さんは、情報のスピードは大した話じゃなくて、得た情報をもとにどう判断するかが大事と言っていました。結果論としてローマは滅びましたけど、その判断がうまくいったから、黄金の時代を築けたんでしょうね。だからファクトと、それをもって正しく判断することが大事なんですよね。
榊原:仕事柄、いろんな企業からサイト集客の相談をされるんですけど、現場の担当者は毎日検索順位を調べてたりするんですよ。「昨日は9位で、今日は5位に上がった。そしたら次の日は9位に下がってる。」と、一喜一憂している担当者って実際います。
ところがweb戦略において、それはあんまり意味ないんですよね。昨日と今日で起きた事象にフォーカスすることはあまり意味がないんです。しかし、1週間、1ヶ月の期間だと重要になってきます。
どの単位や時間軸で知るべき情報なのかが大事ですよね。8割9割はさざなみレベルの事柄なので、より大きな潮の満ち引きだったり地殻変動レベルの変化に注目することが重要なんじゃないでしょうか。
今か未来か、生き残るために経営者がすべき選択
石川:基本的な情報に執念していく話をファイナンスの方が話しいていたんですけど、時価総額がいきなり上がるようなIT系の企業があったりして、財務の方の数字に近づいていく、大きく乖離するものは、ロングスパンで見たら結局実態に近づいてくるという話を聞いたことがあります。
榊原:時価総額と実態価値との差の変化を見るのは興味深いですね。結果として実態に本当に近づいてるのか、近づいている間に実態が変わる場合もありますし、実態はどんどん変化します。
会社が絶好調の時でも、漫然とした経営者が、先代が作った盤石な機敏の上に立っているだけかもしれませんしね。利益出すために全然投資してなくて、バトンを受けた優秀な後代がすごい苦労するみたいなこと、よくあるじゃないですか。
大前:似たような話で、イーストマンコダックと富士フィルムの比較の話はビジネススクールでよく出てきます。コダックには典型的なMBA出身CFOがいたのか、効率的な資本負債構成を作ろうとしていたのか、資本って高いので借り入れを増やして一株あたりの株価を上げるという戦略をとっていたんですよ。それは極めて合理的な判断なんですけど、印画紙フィルムの市場がなくなっていった時、デジタル化の流れのなかで、既存ビジネスが崩壊していきました。
一方、フジフィルムはフィルム事業がなくなりそうになった時に、フィルムで稼いだ多額の内部留保で従業員をバイオ方面に方向転換していった結果、フィルム事業から次の事業に移行できたんですよね。ビジネススクールで学ぶこととは真逆のことに挑戦して成功したいい例だと思います。
榊原:1、2年の間で利益を出すことは、コストセーブなどでいくらでもできるかもしれませんが、5年後10年後に生き残っていくためには、未来への投資をしなくてはいけないってことですね。
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