世の中の興味深いマーケティング事例や大きな数字、意外な事実など、経営者 榊原直也 のアンテナに留まったビジネス話題をご紹介する『ばらさんのBusiness Talk | バラトーク』。今回のテーマは、未来の人類が持つ新たな能力について。現在・過去・未来を検証し、導き出した答えとは!?
◇ 出演者 榊原直也 / 曽志崎寛人
◇ ゲスト 大前和徳さん / 石川祥一郎さん
提供 : データ・サイエンティスト株式会社
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- なぜ我々は長期的投資が苦手なのか
- バラさんの未来予想図 人間は進化し預言者になる!?
- おだやかな中国人が増える理由 ー環境がつくる民族性ー
- 古代の超長寿大国・ローマ帝国の歴史
- ローマ帝国繁栄のキーワードは、多様性とインセンティブ
- 「良い皇帝」招き寄せた、ローマ帝国の最後
- 歴史好きが注目する「ローマよりも面白い国」とは
なぜ我々は長期的投資が苦手なのか
大前:最近、大手企業の新規事業開発のプロジェクトを支援することが多々あります。その中で、プロジェクトメンバーの方々は、よく、こんな葛藤を抱えています。
「今の事業だけでは現在の売り上げは続かない。だから、新しい収益のタネを作らなくてはならない。でも、会社の人員はギリギリだし、まずは四半期目標や月次目標も達成しなくては…」
こうして、未来の5億円より、直近の1億円をなんとかしようとする。短期の数字づくりを優先するため、未来の投資にはなかなか踏み切れない、という葛藤です。
榊原:未来を見据えて長期的な投資を行うのは、今の人類には進化の過程を見ても難しいジャッジですよ。進化の歴史上、人類は生き延びるため、反射神経を磨き続けた時期が長かった。今でも日本は、人は3~5年後の大きな利益より、目の前の利益を追い求めがちですよね。
大前:そういう意味では、先日紹介したベルリンは目の前のことに左右されず、未来を見ているな、と思います。
曽志崎:ベルリンは壁の崩壊を経験していることで、目の前の現実の存続を前提にしない価値観ができているのかもしれませんね。だから将来に思いを馳せることができるのかもしれません。
バラさんの未来予想図 人間は進化し預言者になる!?
榊原:実は私、人類の将来を楽観視しています。
昔は生きるか死ぬかの瀬戸際で、長期的なことを考える余裕はなかったですよね。
でも、今の平和な時代、、目の前の損得が、命を脅かすことは少ないですよね。そのため、直感的に長期的に有利な方を選べる人は、これから増えていくのではないでしょうか。
大前:肉食系の弱肉強食時代から、草食的で長期的な農耕時代への変化ですね。
榊原:かつて人類は、全員が営業マンのようでした。今日の糧を獲得できるグループの生存確率が高かった。しかし今は、今日の糧を追わなくても子孫を残せる時代です。
大前:近年のベーシックインカムの議論に象徴されるように、最低限の生活ためのお金は国がなんとかしてくれる。今日の糧を追わない社会に向かっていくのは確かですね。
榊原:今はみんな、1週間~1ヶ月先の事柄を予測することは得意なんですよね。でもこれからは、さらに2~3年先の遠い未来のことを予想できる預言者のような種族が現れてくる。
数千年、数万年先には、複雑系のレベルで物事をジャッジし、未来をピタリと当てられる人が増えているかもしれません。
大前:全員が預言者になったら、バリューがあまりないかもしれませんよ(笑)。でも面白い見立てですね。
おだやかな中国人が増える理由 ー環境がつくる民族性ー
大前:インディアンは3世代先を考えて、今を判断するそうです。まさに、未来の預言者の種族のようですよね。
榊原:インディアンはかつて、アメリカ大陸に山ほどいた大型哺乳動物を、狩猟によって相当数を絶滅させました。彼らを脅かす大型哺乳動物がいなくなり、突然襲われる心配がなくなった時、彼らはどう考えたのでしょう。「ちょっと先のことでも、ゆっくり考えよう」ってなりませんか?
大前:置かれた環境が、民族性に影響を与えるのではないかという説ですね。
以前、孔子の第75代直系子孫の孔健さんという方にお会いした時、日本と中国の国民性について、面白い話をして下さいました。
日本は豊かな土地に恵まれているため、人々はどこか穏やかでのんびりしている。一方中国は、砂漠が多い、生きるには過酷な環境です。勝つか負けるかの生活の中で、人々はアグレッシブでガツガツとした気性になるのではないかというのです。
ただ近年、穏やかな中国人が増えているような気がします。日本に住み、日本の気候風土にふれため、または中国自体の生活レベルが上がったためではないかと考えています。
古代の超長寿大国・ローマ帝国の歴史
石川:大前先生にお聞きします。気候風土が民族性に影響を与えるという観点から、あの超大国・ローマ帝国を論じてみたいんです。
ローマ帝国は、先を見据えた考え方のできる為政者の割合が、多かったのか否か。パックスロマーナという概念ができた背景やファンダメンタルに、共通項はあるでしょうか。気候風土は影響したのでしょうか。
大前:そうですね。ローマ時代の後には、パックスブリタニカ(イギリスが世界の中心であった時代)や、パックスアメリカーナ(アメリカが世界の中心であった時代)があります。その中でも本当にローマが強力であった時代であるパックスロマーナは、大体紀元前2・3世紀ぐらいから4世紀まで、7~800年は続きました。
榊原:7~800年!
大前:半端ない長さですよね。東ローマ帝国が滅ぶのは14世紀半ばのことなので、パックスロマーナは、14世紀まで千数百年続いたとも考えられます。ローマ帝国の支配時代は、共和政の時代あり、帝政時代ありと、政治システムは変遷しています。
では、ローマ帝国が栄え、そして滅びた理由とは何だったのでしょうか。
ローマ帝国繁栄のキーワードは、多様性とインセンティブ
大前:まず、ローマ帝国繁栄の最大の理由は、多様性を受け入れ、さらにインセンティブを与えたところです。
榊原:インセンティブ!面白いですね。
大前:ローマ帝国では、ローマ人がすべてを支配していたわけではありません。ローマ的価値観のもとに、多様な民族や宗教の人たちが、集っていたんです。
多様な人々に、言語・信仰の自由を認め、その見返りに税金と軍役を課す。さらに、軍役で功績をあげれば、誰でもローマ市民になれるというインセンティブを提示しました。頑張れば頑張るだけ生活が良くなる、頑張れるシステムで統治していました。
ギリシャ時代はローマ時代に比べて、短いですよね。
ギリシャとローマの大きな違いの一つは、奴隷制度にあります。ギリシャの奴隷は、功績をあげても身分は変わらない。それに対してローマは、奴隷でも功績をあげれば、市民権を貰える可能性がある。
石川:インセンティブが導入された社会システムは、ローマ時代初頭からあったのですか?
大前:いえ、最初からあったわけありません。様々な民族を取り入れ、国が拡張する中、統治法を模索したんです。その結果、民族のアイデンティティはそのまま認め、義務だけを課し、インセンティブを与えるところに到達した。非常に賢明なローマの統治システムだと思います。
現代社会はローマから、インセンティブの与え方を習うべきでしょう。人間に、社会のために尽くそうと思わせるために、インセンティブは重要です。
榊原:持続的に頑張れる仕組みがあるのは良いですよね。日本でも、頑張ったら港区民になれますよ、といった制度を作ってみるとか(笑)。ローマをお手本にできることはありそうです。
「良い皇帝」招き寄せた、ローマ帝国の最後
大前:作家・塩野七生さんの本によると、ローマ帝国が滅びた決定的なきっかけは、キリスト教的価値観の浸透だそうです。それまでローマは八百万の神を信仰し、街々には日本のように祠が多くありました。
ところがある時期、キリスト教がローマの国教になる。すると全ての神、さらに皇帝よりもえらいのがキリスト教の神様となります。
キリスト教では、神のもとで全ての人は平等です。奴隷もローマ市民もなく平等になりました。差がなくなったローマ帝国では、誰も頑張らなくなり、じわじわと崩壊していきました。
みなさんはよく、「良い皇帝」と「ダメな皇帝」について耳にしませんか。
しかし、良い皇帝とはキリスト教的価値観のもとに、良いと言っているのです。塩野七生さんは、ローマ帝国の根本の価値を崩壊させたきっかけを作った皇帝は、いわゆる「良い皇帝」だったとおっしゃっています。
歴史好きが注目する「ローマよりも面白い国」とは
榊原:中国共産党は今、どんな宗教の神や法律よりも、中国共産党が上だという解釈で成り立っていますね。もし中国共産党が、中国化する際に無理に中国的にしようとせず、多様性を認めるローマ式統治法を採用したら、ローマ時代のように長く続来ますか。
大前:中国は元々が多民族の国家です。だから、歴史的に例がないわけではないんです。
以前、歴史が大好きなライフネット生命の出口さんとお話しした時に、「ローマ帝国より、もっと素晴らしい国があったんだよ」と、聞いたんですよ。
榊原:(興奮気味に)おおっ!
大前:それは、元です。
元は本当に多民族・多宗教な国家でした。アジアの歴史としては長くは続かなかったのですが、人員登用のレベルが非常に高い。様々な人材をどんどん登用した国が、フビライの元だったとおっしゃっていました。フビライの本を強く勧められました。
榊原:その本はもう読まれましたか??
大前:いえ、まだ読んでいません。。
榊原:そしたら輪読会しないと。元の凄さの秘訣を皆で探ってみたいですね。
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